「ファンタビ」グリンデルバルドは単なる悪役じゃない!名優マッツ・ ミケルセンの“悪役列伝”でひも解く人間味とは?
「ハリー・ポッター」魔法ワールドの最新作にして、「ファンタスティック・ビースト」シリーズの第3弾『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』(公開中)。ユニークでかわいい魔法動物や大迫力の魔法バトルが見どころの本作だが、なかでも大きな注目を集めているのが、魔法界と人間界の支配をもくろむ黒い魔法使い、ゲラート・グリンデルバルドに扮するマッツ・ ミケルセンの存在感だ。デンマーク出身の国際的な俳優であるミケルセンは、これまでにも印象的な悪役を何度も演じ、気品あふれる美しいその佇まいから“北欧の至宝”とも称されてきた。そこで今回、本作で新たにファンになった人、“マッツ沼”にハマって久しい人にも向けて、ミケルセンのキャリアをグリンデルバルドのキャラクターにも通ずる魅力的な悪役にフォーカスして振り返ってみたい。
元ダンサーからハリウッド大作に出演するスターに!演技派としてヨーロッパでも活躍
若いころは体操選手を志してトレーニングを受け、その後はプロのダンサーとして活動してきたミケルセン。演劇にも興味を持った彼は、30歳でデンマークの国立演劇学校に入学する。のちに『ドライヴ』(11)を手掛けるニコラス・ウィンディング・レフンの『プッシャー』(96) で長編映画デビューを果たすと、同監督の『ブリーダー』(99)や脚本家としても活躍する盟友アナス・トマス・イェンセンの『ブレカウェイ』(00)、名匠スサンネ・ビアの『しあわせな孤独』(02)といった母国の話題作に立て続けに出演してきた。
2000年代からはハリウッドにも進出し、ヒットメーカーのジェリー・ブラッカイマーが製作を務めた『キング・アーサー』(04)に参加。「アーサー王伝説」をベースにした史劇アクションで、ミケルセンは円卓の騎士の1人、トリスタン役で出演する。
口数が少なく、孤独を好む人物として登場したが、相棒であるタカと戯れたり、弓矢の達人で遠く離れた敵を撃ち抜いたり、ステラン・スカルスガルド演じるラスボスと壮絶な一騎打ちを繰り広げるなどキャラ設定のデパート状態。ある意味、メインキャストのクライヴ・オーウェン(アーサー役)、ヨアン・グリフィズ(ランスロット役)、キーラ・ナイトレイ(グウィネヴィア役)よりも目立っていた。ちなみに本作には、若かりしころのジョエル・エドガートン(ガウェイン役)や後述の「HANNIBAL/ハンニバル」で共演するヒュー・ダンシー(ガラハッド役)も名を連ねており、いま改めて見ると信じられないような豪華キャストが勢ぞろいしている。
ミケルセンの躍進は続き、メインヴィランを演じた『007 カジノ・ロワイヤル』(06)を皮切りに、『タイタンの戦い』(10)やマーベル・シネマティック・ユニバース作品の『ドクター・ストレンジ』(16)、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)といった大作映画に出演。Netflix映画『ポーラー 狙われた暗殺者』(19)で凄腕の暗殺者を熱演したほか、小島秀夫が企画・脚本・監督・ゲームデザインを務めた「デス・ストランディング」では主人公(=プレイヤー)のフラッシュバックに現れる謎の戦士、クリフの声やモーションキャプチャーも担当しており、今後も『インディ・ジョーンズ5』(公開日未定)が控えている。
一方、母国デンマークを中心にヨーロッパでも活躍。アカデミー賞外国語映画賞(現国際長編映画賞)にノミネートされた『アフター・ウェディング』(06)や『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』(12)の主演を務めたほか、同世代のトマス・ヴィンターベア監督と初めてタッグを組んだ『偽りなき者』(12)でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞するなど演技派としての地位も確立。ヴィンターベアと再びタッグを組んだ『アナザーラウンド』(20)で、アカデミー賞国際長編映画賞に輝いたことも記憶に新しいはず。