強烈すぎる”タコ踊り食い”シーン…『オールド・ボーイ』チェ・ミンシク、60歳の誕生日
2004年、第57回カンヌ国際映画祭で審査委員長のクエンティン・タランティーノ監督に激賞されグランプリを受賞し、国内外の映画賞で高い評価を得た鬼才パク・チャヌクの傑作復讐サスペンス『オールド・ボーイ 』(03)。パク・チャヌク監督デビュー30周年を迎える今年、4Kリマスター化され5月6日より全国公開される。主人公オ・デスを演じた俳優チェ・ミンシクの60歳の誕生日となる今日4月27日、オ・デスの生命力と執着心がにじみ出るタコの踊り食いシーンの映像が公開された。
作:土屋ガロン(狩撫麻礼)、画:嶺岸信明による日本の同名コミックを原作に、『JSA』(00)で国際的に注目を集めていたパク・チャヌク監督が映画化した本作。平凡な人生を送っていたオ・デスは、ある日突然何者かに拉致され、気が付くと狭い監禁部屋にいた。一切の理由が明かされぬまま15年の月日が流れたある日、デスは突如解放された。復讐を誓うデスに手助けを申し出る若い女性ミド(カン・ヘジョン)。そして目の前に現れた謎の男(ユ・ジテ)。男は5日間で監禁の理由を解き明かせと、命を賭した「死のゲーム」を持ちかける。予想を超えるストーリー展開と、スタイリッシュかつ容赦なきバイオレンス描写が話題となり、いまもなお多くのファンに愛される作品だ。
チェ・ミンシクは、学生時代から演劇を始め、いくつかのTVドラマや映画への出演を経て、日本でも話題となった『シュリ』(99)で圧倒的な存在感を示した。『オールド・ボーイ』で世界中に驚きと衝撃を与え、その後も『親切なクムジャさん』(05)、『悪いやつら』(12)、『新しき世界』(13)などで重要な役を演じたほか、リュック・ベッソン監督『LUCY ルーシー』(14)でハリウッドに進出。数々のヒット作、話題作に出演した。ある時は、ささやかな暮らしを送る普通の男、またある時は犯罪者、サイコパス、教師、学者、政治家、将軍など、ありとあらゆる役柄を巧みに自分のものにし、それが非現実的な役柄であろうと、観る者の心を惹きつけることが出来る、韓国を代表する名優である。
本作でも、くたびれた酔っ払いの中年男から、極限状態に追い込まれ、復讐を誓った怪物へと変貌していく様をエネルギッシュに怪演している。孤独な哀しみを抱えながら笑顔を見せようとする場面など、難しい感情でも見事に表情で訴えることが出来るのも彼の特徴だ。
解禁となった本編映像は、チェ・ミンシク演じるオ・デスが偶然入った日本料理店で起きる出来事をとらえたシーン。15年におよぶ監禁生活から突如解放され、生きている実感を求め、生きたタコをまるで獣のように頭からむさぼり食うオ・デスの姿をとらえている。タコの足が彼の顔にまとわりつく様子は、しつこさと執着を表現しているようにも感じられる、本作の中でもとくに印象深い場面だ。
近年では、韓国で公開され大ヒットを記録している新作『不思議の国の数学者』(22)で、脱北した天才数学者を演じ、今年Disney+にて配信するドラマで24年ぶりのドラマ出演を予定している。これからも目が離せないチェ・ミンシクの名を世界的に知らしめた映画『オールド・ボーイ』。映画の歴史を塗り替えた傑作とスクリーンで再会できるのが待ち遠しい。
文/荒井 南