「TOKYO VICE」渡辺謙が語る“1990年代”東京とそこに生きる人々…「人間の精神構造や社会構造にものすごく大きな変化を及ぼした」
映画やテレビドラマに撮影可能なロケ地の情報を提供し、案内、調整も行う組織「東京ロケーションボックス」は、映像作品を通して東京の魅力を国内外に発信しながら、ロケ撮影で地域活性化を図ることを目的としている。今回、実際に東京ロケーションボックスから制作のサポートを受けた作品として、WOWOWとHBO Maxによる日米合作のドラマシリーズ「TOKYO VICE」(WOWOWにて毎週日曜22時より独占放送中)をフィーチャー。MOVIE WALKER PRESSでは、本作で敏腕刑事の片桐を演じ、エグゼクティブ・プロデューサーとして企画の立ち上げに携わった渡辺謙に取材を敢行。作品の見どころはもちろん、日本とハリウッド双方の撮影現場を知る渡辺に、“世界で最も撮影が難しい都市”と言われる東京でのロケーション撮影の裏側を聞いた。
「TOKYO VICE」の舞台は1990年代の東京のアンダーグラウンド。渋谷、六本木、新宿歌舞伎町、赤羽などで都内大規模ロケが行われた。きらびやかな表の顔とは違う、東京の凶暴な裏の顔を、日本の新聞記者になったアメリカ人青年ジェイクの目を通してあぶり出していくクライムサスペンスで、日米の実力派キャストとハリウッドのトップクリエイターが集結していることでも話題を呼んでいる。
主人公のジェイクには、『ベイビー・ドライバー』(17)でゴールデン・グローブ賞にノミネートされ、スティーヴン・スピルバーグ監督の『ウエスト・サイド・ストーリー』(21)で主役にも抜擢されたアンセル・エルゴート。日本からは渡辺に加えて、菊地凛子、伊藤英明、笠松将、山下智久らが参加し、第1話の監督を、『ヒート』(96)、『マイアミ・バイス』(06)などで知られる名匠マイケル・マンが手掛けたこともあり、本作は放送前から大きな盛り上がりを見せていた。
「マイケル・マン監督が最後までプロデューサー陣と戦って、東京と東京近郊の街で全編撮影することになった」
渡辺が主演した舞台「The King and I王様と私」の演出家バートレット・シャーから、本作のオリジナル・シナリオを書いた脚本家のJ・T・ロジャースを紹介されたことがすべての始まりだった。「それでJ・T・ロジャースらと一緒にエグザクティブ・プロデューサーとして参加することになったのですが、基本的な仕事は英語の脚本から翻訳された日本語のセリフをチェックすることでした」と振り返る。
「新聞記者も刑事やヤクザも普通の人が使わない言葉を使うし、言葉使いはジェネレーションによっても変わる。そういうところを意識しながら、それぞれのキャラクターに合った言葉にちゃんとなっているかチェックしました。ひどい時には夜中の3時ぐらいに改訂稿のメールが来て、『明日までにチェックバックしてください』みたいなムチャな注文もありましたよ(笑)。そんな作業もしながら、自分の役に向き合っていましたね」。
東京の街中での撮影はハードルが高いことを熟知している渡辺は、「90年代の雰囲気も出さなければいけないので、当初は、フィルムコミッションもある富士山近くの街に90年代の東京のオープンセットを作り、そこで撮るという案もあったんです」と打ち明ける。「でも、監督のマイケルが『(実際の)東京じゃなきゃダメだ!東京の持っているビート感がこの作品には絶対に必要だ!』と最後までプロデューサー陣と戦って。それで東京と東京近郊の街で全編撮影することになったんです」。
「中央線と中央・総武線、東京メトロ丸ノ内線の列車が立体的にクロスする画は一番のねらい」
第1話は、ヤクザが拠点にしているクラブへ向かって、薄暗い通路をジェイクと片桐が並んで歩いているところからスタートするが、「あの、2人が防弾チョッキを着るシーンとホテルの階段を上がってくるところはThe Okura Tokyo(旧ホテルオークラ東京)の旧館なんですよ」と、視聴者が気になるロケ地についても子どものような無邪気な笑顔で語る。
「閉館後の、解体直前のギリギリのタイミングで使わせてもらったから、もうやりたい放題!ただ、そのあとの2人が通されるバーみたいなラウンジはまた別の場所で撮っている。そういう画をつないで、ひとつの場所に見せていくところは映画のスタイルですね」。
第1話で渡辺が登場するのは数シーンだけだが、片桐が猟奇的殺人事件の最初の被害者が見つかった現場を訪れる、御茶ノ水の聖橋での一連のシーンは、そこが東京とひと目でわかることも含め、インパクトのあるシーンになっている。
「マイケルが一番ねらいたかったのは、中央線(の快速)と中央・総武線(各駅停車)、東京メトロ丸ノ内線の列車が立体的にクロスする画。それを撮りたくてあの場所でロケをすることになったのですが、一般道の車を止めることはできないので、僕(の演じた片桐)の後ろで現場を見ている(ジェイクを演じる)アンセルも画面に入れるよう前後から撮影するのは大変でした。でも、それをすごい勢いで撮り切ってしまうのがマイケルなんですよね。彼のそういったバイタリティみたいなものが、すべての画に埋め込まれていったような気がします」。
注目作のロケ地情報がたっぷり!東京ロケーションボックス スペシャルサイト【PR】
■衣装協力
衣装:BRUNELLO CUCINELLI(ブルネロ クチネリ ジャパン株式会社 03-5276-7080)
時計:Cartier(カルティエ カスタマー サービスセンター 0120-301-757)