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“哀愁こそ正義”を地で行くリーアム・ニーソン…『マークスマン』に漂う枯れた魅力をひも解く

コラム

“哀愁こそ正義”を地で行くリーアム・ニーソン…『マークスマン』に漂う枯れた魅力をひも解く

クリント・イーストウッド作品に通じるストイックなヒーロー像

ちなみに本作のロバート・ロレンツ監督は、長年クリント・イーストウッド作品の助監督やプロデューサーを務め、イーストウッドが主演した『人生の特等席』(12)で監督デビューした人物。ニーソンが『マークスマン』について「イーストウッドが80年代に主演したような映画だと思った」と語っているように、本作はイーストウッドが演じ続けてきたストイックなヒーロー像を受け継いだ映画だといえる。

クリント・イーストウッド作品にも通じる『マークスマン』における哀愁漂う正義のヒーロー像
クリント・イーストウッド作品にも通じる『マークスマン』における哀愁漂う正義のヒーロー像[c] 2020 AZIL Films, LLC. All Rights Reserved.

イーストウッドへのオマージュは劇中にもある。シカゴに向かう道中で泊まったモーテルで、ミゲルが1968年にイーストウッドが主演した西部劇『奴らを高く吊るせ!』を観ているシーンがあるのだ。まもなく92歳という年齢ながら、現役で活躍するイーストウッドはもはやハリウッドの長老的存在だが、若い頃から誰かに頼ることなく、自分自身の正義を貫くヒーローを演じ続けてきた。『マークスマン』は、そんなイーストウッドの系譜を継ごうという強い意志を感じさせる。

そんなイーストウッドも近年はさすがにおじいちゃん度が上がっており、アクションスターを演じるのはさすがに難しくなった。しかし、イーストウッドの後継者になれる人材は滅多にいない。ただマッチョなだけでなく、人間としての弱さを繊細に演じる表現力があり、せつない哀愁を感じさせる佇まいも欠かせないからだ。


ミゲルを彼の親類が暮らすシカゴまで送り届けることに
ミゲルを彼の親類が暮らすシカゴまで送り届けることに[c] 2020 AZIL Films, LLC. All Rights Reserved.

その点、今年70歳になるというのに現役感バリバリで、なおかつ枯れた風情を強めているニーソンが『マークスマン』の主演に選ばれたことは当然のチョイスだっただろう。思えば引退状態の元殺し屋を演じた『ラン・オールナイト』(15)、老いらくの恋に落ちて犯罪から足を洗ってセカンドライフを目指す『ファイナル・プラン』(20)、不況に苦しめられるトラック運転手を演じた『アイス・ロード』(21)など、近年のニーソン映画はままならない人生を描いたものが多い。

派手に金庫を爆破しながら、現場にいっさいの痕跡を残さない伝説の銀行強盗の最後のミッションを描く『ファイナル・プラン』
派手に金庫を爆破しながら、現場にいっさいの痕跡を残さない伝説の銀行強盗の最後のミッションを描く『ファイナル・プラン』[c]Everett Collection/AFLO

ニーソンの年齢でアクションスターを背負っているだけでもすごいが、これからのニーソンは「哀愁老人アクション」という前人未到の道を切り拓いてくに違いない。今後も新作が多数待機中なので、ますます深みを増すであろう「ニーソン映画」を追いかけていきたい。

文/村山 章

■『マークスマン』
Blu-ray、DVD
5月20日(金)発売
価格:5,280円、4,290円(ともに税込)
発売元:キノフィルムズ/木下グループ
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
[c]2020 AZIL Films, LLC. All Rights Reserved.
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