阪本順治監督が讃える、伊藤健太郎の熱演「実体験とすり合わせて演じてくれた」
伊藤健太郎が2年ぶりの映画出演にして主演を務める『冬薔薇(ふゆそうび)』が6月3日(金)より公開される。このたび、オリジナル脚本で本作を描きだした阪本順治監督のインタビュー映像をMOVIE WALKER PRESSが独占入手。脚本制作段階での伊藤とのエピソードや、本作のタイトルに込められた裏話が明らかになった。本作を観る前におさらいしておきたい過去の阪本監督作品と共に紹介していきたい。
本作は、ある港町を舞台に“ロクデナシ”という言葉がよく似合う青年を中心に描かれる群像劇。半端な不良仲間と連み、友人や女から金をせびってはダラダラと生きる渡口淳。海運業を営み後継者不足に悩まされている両親の仕事に興味を示さず、親子の会話もほとんどない。そんな折、淳の仲間が何者かに襲われる事件が発生。浮かび上がった犯人像は、思いもよらぬ人物であった。
伊藤健太郎を当て書き!「実体験とすり合わせて演じてくれた」
このたび解禁されたインタビュー映像のなかで阪本監督は、「伊藤健太郎自身のなかにある性質を利用して作り上げていこうと思い、脚本を書く前に2時間くらいプライベートの話をしました」と振り返る。本作の製作発表時のコメントでも「伊藤健太郎に逢い、生まれてからこれまでのことを、SNS上の噂も含め、あれこれと執拗に訊いた。云いにくいことも多々あったと想うが、彼は、なにも誤魔化さずに応えてくれた」と明かしていた阪本監督。
その際に伊藤から得た「心に捻れをかかえ、戸惑いのまま生きている青年」という印象を、劇中で伊藤が演じる渡口淳という役柄に投影し、まさに当て書きというかたちで脚本を作り上げていったという。そして「のどに刺さったトゲのようなものを映画に反映させる。『他人を演じているけれど、あなた自身でもいいんですよ』と伝えてきました。彼はそれを理解し、受け止め、実体験とすり合わせて演じてくれました」と、伊藤の熱演を讃えた。
さらに映像のなかで阪本監督は、“冬薔薇”という詩的なタイトルが生まれた経緯についても明かす。コロナ禍で偶然立ち寄った花屋で見つけた薔薇の花。そこで知った、極寒の冬でも花を咲かせる冬薔薇の刹那的な印象。それらを語りながら、「こんな文学的なタイトルをつけたのは初めてです」と思わず照れくさそうに微笑む様子も。