映画ライターのSYOが『バブル』で感じたSNS事情「周囲の意見に左右されることなく、自分で観て感じたことを大切にしてほしい」
「進撃の巨人」の荒木哲郎監督が、現在放送中の「SPY×FAMILY」でも注目のWIT STUDIOとの強力タッグで世に送りだすオリジナルアニメーション映画『バブル』(公開中)。制作陣には、プロデューサーに『君の名は。』(16)などのヒットメーカーである川村元気、脚本に「魔法少女まどか☆マギカ」の虚淵玄、キャラクターデザイン原案に「DEATH NOTE」や「バクマン。」の小畑健、劇伴には『プロメア』(19)の澤野弘之といった日本が世界に誇るトップクリエイターたちが名を連ねる。
物語の舞台は、世界中に降り注いだ謎の泡(バブル)によって、重力が崩壊してしまった東京。廃墟と化したかつての日本の首都には、いつしか身寄りのない少年たちが暮らすように。そんな事情を抱えた少年の一人で、特殊な聴力を持つ孤独な少年ヒビキ(声:志尊淳)は、謎の少女ウタ(声:りりあ。)と運命的な出会いを果たし、閉ざしていた心を開き始めていく。
圧巻の映像美を背景にラブストーリーが展開される本作の魅力を紐解くため、映画ライターのSYOへのインタビューを実施。映画・アニメ・ドラマを中心に、レビューやコラムを執筆するだけでなく、トークイベントや映画情報番組にも出演するSYOに、本作で惹かれたポイント、映画館でこそ味わうべき理由について語ってもらった。
「照明や色彩といった、作品に携わるスタッフの方々の情熱が伝わってきました」
本作の特徴としてまず挙げられるのは、実在のスポーツであるパルクールを題材にした大迫力のアクション。少年たちは地域ごとにチームを組み、生活物資を賭けてチーム戦を行う「バトルクール」に興じている。「進撃の巨人」での立体起動装置の動きを生みだしたWIT STUDIOらしく、縦横無尽なカメラワークと超ハイスピードによる、パルクール・アクションが繰り広げられる。
SYOはかねてより荒木作品のファンだったこともあり、「割と序盤で泣いちゃいました」と振り返る。「『甲鉄城のカバネリ』など荒木さんの作品がすごく好きなので、新作を観られたこと自体の感動もあったのですが、物語の本筋に入る前にとてもクオリティの高い“画”を見せられた感覚があって、反射的にウルっときました」。
荒木監督をはじめ、クリエイター陣の名前を聞いた時から、本作への期待感に胸を膨らませていた。作品を実際に鑑賞してみて、ずっと頭から離れないと語るのは、“メイクアップカット”の美しさだという。
“メイクアップカット”という言葉を初めて聞いた人のために簡単に説明すると、あるシーンを際立たせるためにキャラクターに“化粧”を施すこと。つまり、キャラクターの決めカットに、髪の毛や瞳の質感を足したり、まぶたにアイシャドウをのせたりといった効果を描いていく。2016年に放送された「甲鉄城のカバネリ」で初めて実践され、この工程を専門に行うアニメーターも用意するなど、WIT STUDIOならではの武器にもなっている。
「照明や色彩といった、作品に携わるスタッフの方々の情熱が伝わってきました。もちろん、スピーディで疾走感のあるパルクールのシーンにも引き込まれるのですが、画が動く、その一歩手前の段階でグッとくるものがありました」と映像を観た時の心境を細かく述懐してくれた。