水谷豊監督と町田啓太が語り合う、"宝物”のような師弟関係「僕も水谷さんのように歩みたい」
現在公開中の水谷豊監督作品第3弾『太陽とボレロ』。存続危機にある地方都市のアマチュア交響楽団を舞台に、個性豊かな楽団メンバーたちの奮闘を描く本作はユーモアの散りばめられた温かな1作として完成した。そのなかで仕事と楽団の両立に悩むトランペット奏者役に抜擢されたのが、町田啓太だ。憧れの存在だった水谷監督との巡り合いに、町田は「たくさん極上の体験をさせていただきました」と感激しきり。優しさと熱さ、両方の魅力を持ち合わせた水谷監督と町田は息もぴったり!ツーショットで撮影現場の様子を振り返ってもらうと共に、監督業、そして俳優業の醍醐味について語り合ってもらった。
「町田さんは必ず、ユーモアのある役を演じられると思った」(水谷)
――町田さんが演じられた田ノ浦圭介は、コミカルで三枚目の雰囲気のある役柄でもあります。圭介役に町田さんを抜擢した理由から教えてください。
水谷「脚本が出来上がって、弥生交響楽団のトランペット奏者は誰にやってもらおうかとキャスティングが始まった時に、町田さんと同じくらいの年代の俳優さんの資料をズラッと並べたんですね。どうしようかと考えながら、町田さんの出演作もいろいろと観させていただきましたが、それが本当にすばらしかった。町田さんがピカイチと言いますか、『この人は必ず、ユーモアのある役を演じることができる』と感じました。そういった役に必要な特別なリズム感とセンスがある。いざ演じていただいたら、想像以上でしたね」
町田「ありがとうございます。ものすごくうれしいです」
――町田さんにとって、水谷監督の作品に参加できる喜びとはどのようなものだったでしょうか。
町田「いつか水谷さんとご一緒したいと思っていました。俳優業をされている姿や、インタビューに答えられている姿などを目にしても、本当にステキだなと思って。実際にお会いしてみるとプロフェッショナルとしての姿勢に加え、ユーモアがたっぷりある方で。まさにこの映画が、水谷さんご自身を象徴しているような作品だなと感じています。僕はこれからも役者を続けていきたいと思っていますが、いまこの年齢で水谷さんとご一緒できて本当によかったなと。こう言ったらいろいろなところに角が立つかもしれないですが(笑)、こんなにも『こうなれたらいいな』と思える人には、これまで会ったことがなかったんじゃないかと感じるほどです。間近で同じ時間を過ごさせていただき、僕も水谷さんのように歩みを進めていきたいなと思いました」
――水谷監督から演出を受けた感想を教えてください。
町田「それはもう、驚くことばかりでした!クランクインするまで、僕なりに圭介という人物について考えて現場に入ったんですが、きっと僕は真面目に考えすぎていたんですね。圭介という役をもっとチャーミングに、もっとコミカルにできる可能性がたくさんあったはずなのに、それを見つけることができていなかった。現場に入ってみると、監督からアイデアがたくさん出てくるんです。例えば、毛ばたきを持ってリズミカルに歩くシーンや、HideboHさん演じる課長からお説教をされるシーンなど、いま思い出しても楽しい場面ばかり(笑)。監督が『こうやってみようか』とたくさんチャレンジをさせてくれて、僕もそれにトライしてみることがとてもおもしろかったです。僕がやったことに対して監督がものすごく笑ってくれるんです。監督の笑い声が力になり、その積み重ねでどんどん圭介というキャラクターが豊かになっていったなと思っています」
水谷「僕の笑い声が入ったことでNGになってしまった…という場面もありましたね(笑)。僕も彼の演技を見ていて、どんどん楽しくなっていってしまって。圭介があまりにも話に夢中になって、トイレに行くのを忘れてしまうシーンがあるんですが、あのシーンも町田さんがやったからこそ、おもしろいものになった。この若さでコメディセンスをしっかりと持っていて、脚本に書かれていた以上に、圭介というキャラクターをおもしろいものにしてくれました」