水谷豊監督と町田啓太が語り合う、"宝物”のような師弟関係「僕も水谷さんのように歩みたい」
「師弟関係でまたご一緒できたら、ものすごくうれしい」(町田)
――町田さんは、監督のアイデアでキャラクターがどんどん豊かになっていく現場を経験して、役者さんとしてどのような刺激を受けましたか。
町田「改めて、演じることのおもしろさを感じることができました。もしかしたら自分が狭めてしまっていたかもしれない世界が、広がっていくような気がしたんです。もしトライしてみてダメだったら『それは違うぞ』と言ってもらえばいいわけですから。もっと自由でいいんだ、自分も楽しんでやっていいんだと気づくことができて、すばらしい時間を過ごすことができたなと思っています。ものづくりの現場に『勉強をしに行く』というのはよくないのかなとも思いますが、今回はメンタリティの面でも、お芝居の面でもたくさん勉強をさせていただきました」
――もし今後、町田さんを主演にした映画を撮るとしたらどのようなジャンル、役柄がいいと思いますか。
水谷「とても難しいですね。町田さんは、俳優としていろいろなイメージが想像できるタイプなんですよ。一つに絞るのはもったいない!何本かやってもいいんだったら…」
町田「あはは!こんなにうれしいことはないです!」
水谷「今回ご一緒してみて、独特のリズム感とユーモアのセンスをお持ちであることを確信したので、これからも楽しみですね。本作の圭介にも、自然にそのリズム感が注ぎ込まれているんです。今回とはまったく違う作品、役柄を演じてもらってもおもしろいでしょうね。そうしたらまた新しい世界に行けるでしょう。おそらく町田さんと時間を過ごした方はみんな、チャンスがあったらまたぜひ一緒にやりたいと思うんじゃないかな」
町田「最高のお言葉をありがとうございます!僕も一つに絞れないくらいなので、いろいろな作品でご一緒できたらものすごくうれしいです。また師弟関係でなにかやれたとしたら、僕の一生の宝物になるなと思います。本作での圭介と、水谷さんが演じられた藤堂先生にも、師弟のようなつながりがあるので、それもとてもうれしかったです。もっと水谷さんからいろいろと吸収させていただきたいなと思っています」
水谷「こちらこそ、俳優さんからたくさんの力をいただきました。演出する側が困ることって、演じていただいているキャラクターに血が通わない時なんです。町田さんの演じるキャラクターには、血が通っていますよね。町田さんはそれができる人なんです。俳優ってやはり、自分の持っている引き出しからしか、表現を出すことができないものだと思うんです。それは学んで習得できるものではなく、無意識のうちに出てくるものが大切だったりする。そういった意味では、日々の生活がとても大事になってくるわけですよね。演じるとは、なんとも奥深いものです」
町田「こういったお話を伺うこともそうですし、本作を通してたくさん極上の体験をさせていただきました。新しい、楽しい世界に連れて行っていただいたなと思っています」
取材・文/成田おり枝