安彦良和監督が惚れ込んだ、新人声優・廣原ふうとカーラ役との思わぬ共通点「役柄までぴったりだったとは」
「カーラの境遇と少し似ているなと思って、役に共感しながら演じました」(廣原)
――カーラは口数が多いとはいえないキャラクターでした。
廣原「そうですね。あまり強く感情を出すキャラクターではないなと台本を読んで感じたので、どうやったらキャラクターの心情を伝えられるかというところは、難しかったです」
安彦「小さな子どもたちを束ねてお姉さん、むしろお母さんに近い役回りをしていて。同い年にマルコスというのもいるんだけど、こっちはケンカだけ強いけどガキでね。そっちも面倒みてやらないといけない(笑)。芯の強い寡黙な子。だから難しい役どころだったと思います」
――廣原さんがカーラを演じて印象に残っているシーンは?
廣原「いちばん印象深いのは、カーラがドアンにお茶を持っていくシーンです。普段はあまり大きく感情を表さない彼女がドアンに対して思いきり感情を出して話していて。演じていて自分自身の胸が痛くなるようだったので、一番観ていただきたいシーンです」
安彦「あのシーンは難しい芝居が求められたと思ったのですが、実際は2~3テイクをもらっていますけど、すんなりいった印象ですよ。難しい役ながら、アフレコではそれほどNGを出していなかったんです」
廣原「大きなお芝居をする部分では、音響監督の藤野さんからひとつひとつディレクションをいただいていたので、そこでは何回かやらせていただいていました」
――今作では子どもたちがヤギを飼っていましたが、その乳搾りなどは安彦監督の子ども時代の経験が出ている気がします。
安彦「そうですね。せっかく絞ったミルクを、ヤギが暴れた拍子に子どもたちがこぼしたり…(笑)。廣原さんの世代には新鮮に映ったシーンだったのではと思いますよ」
廣原「実は子どものころ、地元に牧場体験できるところがあって、牛のお乳を絞らせていただいた経験があります。1回では上手くいかなくて、何回も教わりながらやっとできたという難しさを、あのシーンの子どもたちを見て思い出しました」
――劇中の子どもたちのなかで、廣原さんご自身と似ていると思う子はいましたか?
廣原「演じさせていただいたこともあってカーラが少し似ているなと思うところがあります。私は兄弟が多い環境で育っていて、実際に私7人兄弟の一番上なんです」
安彦「そうなの?それは知らなかった(笑)。7人兄弟は多いね…」
廣原「カーラほどではないですけど、長女という立場だったので小さい子の面倒を見ながらわりとお母さんのような感じでやってきたこともあったので、そこは役と共感できました。今作の子どもたちと同じで、6人ともまったく一緒の子はいなくて。泣き虫だったり、逆に気が強かったり、おちゃらけている子だったり。あやしているシーンも『あっ、こういうことあったな』と思い出しながら演じさせていただきました」
安彦「台所で指示出しをするシーンとか演技が自然だなと思って聞いていたけど、その辺のいろいろな経験があるのかもしれないね。廣原さんは若いから、兄弟に小さな子はいるのかな?」
廣原「末の兄弟が、今年小学1年生です」
安彦「(作中の子どもたちと)同じような世代で、役柄もぴったりだったとは。ぜひ、ご家族で一緒に観てください。お姉ちゃんのお姉ちゃん役をね(笑)」