安彦良和監督が惚れ込んだ、新人声優・廣原ふうとカーラ役との思わぬ共通点「役柄までぴったりだったとは」
「本作には『機動戦士ガンダム』のテイスト、いいところが全部詰まっているんですよ」(安彦)
――安彦監督にとってドアンは初めて扱うキャラクターになりましたが、どうでしたか?
安彦「ややこしくはないですね。わかりやすいというか、影の部分を含めてね。影のあるキャラクターは基本好きだから、入れ込むのには苦労はなかったですね。動かしやすいし、芝居もつけやすいし。キャスティングでは難航しましたけどね。武内駿輔さんという若くて、すばらしい役者が見つかって。上手いよね」
廣原「すばらしいです」
――カーラはいかがでしたか?
安彦「動かしやすいですよ。上映時間が許すなら、もうちょっと描きたかったなと。先ほど話に出たカーラがドアンにお茶を届けるシーンで、イムさんにも『カーラはドアンに恋をしているんです。そのつもりで』と伝えたら、『マルコスじゃないんですか?』と返ってきて。『マルコスはカーラにとっては子どもだから』と念押ししました(笑)。同い年では女の子のほうが精神年齢は上だから、背伸びして大人を好きになったりするんですよ。僕らの時代だと森昌子の『せんせい』の歌詞のような(笑)。背伸びするんですよね。同級生なんかは子どもだって。その辺、もうちょっと描きたかったなとは思っています」
――マルコスがライバル視するアムロも、カーラから見れば…。
安彦「ええ。アムロもカーラから見たら坊やだから(笑)」
――最後に、今作に興味を持っていただいた方へメッセージをお願いします。
廣原「ぜひ『ガンダム』を観たことがないという方にも、この『ククルス・ドアンの島』を観ていただければ。この作品には、『機動戦士ガンダム』の魅力が全部詰まっていると思います。島で一生懸命暮らす子どもたちや、自分の正義を心に抱いて戦うドアンに、本当に細かい感情がギュッと詰まっているのが、みなさんにも感じとっていただけるんじゃないかなと思います」
安彦「これはうれしい。全話観てくださった人からいいことを言ってもらえました(笑)。このエピソードは、劇場版からはみだした話とか言われていますが、『機動戦士ガンダム』のテイスト、いいところが全部詰まっているんですよ。『ガンダム』が好きだったというファンも、『ガンダムはよくわからない』という人も、もともと観たことがないという人も、これを観たらわかります。尻馬に乗る感じで申し訳ないけど、『そうなんだよ!』っていう気が、いまはしています」
取材・文/小林治