「ムロツヨシが最高に狂っている」「ずっと展開が読めない」映画ファンが体感した『神は見返りを求める』の身につまされるようなリアルさとは?
不快だけど嫌いになりきれない…世の中にあふれているような登場人物たち
また「結構全員、不愉快だった(=良かった)」(女性)とあるように、インパクト抜群な主人公2人に負けず劣らずのしょうもない人間がオンパレードの本作。
特に田母神の後輩の梅川は、田母神とゆりちゃんの間を行ったり来たりして、互いの悪口や嘘を吹き込むタチの悪い人間で、多くの観客が「最も不快」と名前を挙げていたほど。演じる若葉竜也は、絶妙に軽いセリフ回しや顔をしかめつつもニヤついた表情で、軽薄かつ自覚のない人間をリアルに体現。「こういう人はたくさんいる。自分ももしかしたら…」(40代・女性)と身につまされる人もいたようだ。
そのほかにも、栁俊太郎演じるセンスで人を判断する海外帰りのデザイナー、村上や、吉村界人と淡梨扮する人のケンカを動画のネタにする人気Youtuberのチョレイ・カビゴン、陰でゆりちゃんの動画をバカにしている会社の同僚、誰も彼も人を見下して笑うような人ばかり。
「登場人物は好きではないけど、自分も同じようなことをしている面がある」(30代・女性)
「なんだかんだ皆不愉快ではあるんだけど、同時にどうしようもない現実感を感じてしまった以上嫌いになれません」(20代・男性)
あまりにリアルな人物描写には、身に覚えがありつつもそれゆえにどこか嫌いになれないという感想も多く寄せられていた。
自分も“見返り”を求めていた…日常の"あるある"を喚起するエッセンスがてんこ盛り
そんな人物描写だけでなく、「人の本性を表して恐ろしい映画」(30代・男性)という言葉のように、人間の心の底に渦巻く感情を浮かび上がらせている。YouTubeという現代的な題材になっているが、その根底には男女のこじれ、善意と裏切り、嫉妬や憧れ、本音と建前といった、どの時代にも存在する感情やエッセンスが随所にちりばめられている。
特に本作のテーマである“見返りを求めてしまう”、“恩を仇で返してしまう”という点に関しては、身に覚えがある人も多かったようで、
「友人の誕生日にメッセージを送って、自分の誕生日にお祝いされるのを待っていた」(20代・女性)
「先日、初任給プレゼントとして祖母にバラとパジャマを渡したが、その場で開封せず流された。『ありがとう』のひと言をくれたら、仕事を頑張った自分を報いることができたのになあと思った」(20代・女性)
「仕事でなにかトラブルがあった時に助けてもらえるように、普段から愛想よく振る舞うようにしている」(30代・女性)
「家族の優しさを当たり前に思って横柄な態度を取ってしまったことがある」(20代・女性)
といった具体的なエピソードから、
「誰かによかれと思ってしたことに対して、やっぱり感謝やなにかをどこかで求めていることはあると思います」(30代・女性)
「日常生活で我慢していい顔をしているけど、無意識に見返りを求めてしまっていると思います」(30代・女性)
などの感覚的な意見まで、思うところがあるという言葉がアンケートにはズラリ。本作が、誰もが共感できるような物語になっていることを証明している。
「吉田さんらしい、嫌なところと優しさがあり、いろいろと語りたくなる」(30代・男性)と監督ファンもイチオシの『神は見返りを求める』。ぜひ劇場でチェックして、身をえぐられるような思いを味わってみてはいかがだろうか?
文・構成/サンクレイオ翼
※吉田恵輔の「吉」は“つちよし”が正式表記