“女優イ・ジウン”に新たな歴史を刻んだIUにインタビュー。『ベイビー・ブローカー』は「母役を演じてみたいと思った時、運命的に出会った作品」
「他人の人生を生きて、新たな分野に興味を持つようになるのが演技の魅力」
芸能界デビュー15周年を迎える彼女だが、いつの間にか"歌手IU"に負けないくらい“女優イ・ジウン”という肩書きにも慣れてきた。実際「マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」を観た是枝監督は、イ・ジウンの演技が完璧に作品の溶け込んでいたため、彼女の本業が歌手ということに全然気づいていなかったという。イ・ジウンは「普段あまり深く考える機会がない問題などについて興味を持つようになるのが演技の魅力だと思います」とコメントした。
「『ベイビー・ブローカー』のソヨンを演じたことで、社会の暗い一面に目を向けるようになりました。恥ずかしながら、30歳になったいままで、未婚の母が抱えている苦痛や社会的問題について真剣に考えたことがなかったのです。そういう風に、演技を通じて他人の人生を生きることによって、まったく関心を向けていなかったなにかに没頭するようになる感覚が好きです。それが、自分が演技をし続ける原動力になっていると思いますしね。もう一つの演技の魅力は、所属感を感じることができるということですかね。基本スタッフと一緒に動いてはいますが、ソロ歌手として活動しているので、ふと唐突に寂しい瞬間が訪れるわけです。『自分が選択して歩んできたこの道は、間違っていなかったのかな』と不安になる時もあります。しかし映画やドラマを撮影する時は、各自が与えられた役割を果たし、たくさんの人が同じ目標を目指して進んでいくので、とても心強いです」
今後イ・ジウンがどういう作品を選んでどういう演技を見せてくれるのか、いまから期待が集まっている。イ・ジウンは「一番大事なのは“タイミング”かも知れません」と、微笑んだ。
「まだ自分の中で作品を選ぶ明確な基準などは特にないですね。ただ、漠然と『母役もやってみたいな』と思っていたころ、ちょうど『ベイビー・ブローカー』の出演提案を受けたんです。そのタイミングじゃなかったら、そんなに喜んで快諾していなかったかも知れません。『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜』や『ホテルデルーナ ~月明かりの恋人~』も、『次はこういう人物を演じてみたい』と思っている時にタイミングよく自分のもとに来てくれた作品です。歌手としての活動もあり、時間的な制約が多い方なので、次回作もおそらくちょうどいいタイミングに運命的に出会う形になるんじゃないかなと思います」
取材・文/楊智媛