『ブラック・フォン』や「ムーンナイト」のキャラも強烈!演技派イーサン・ホークが見せてきた“狂気”に迫る
悪を断罪するカルト教団の指導者役がヤバい!「ムーンナイト」
そんなホークがMCUに初参戦したのが「ムーンナイト」で、白いスーツとマントを纏ったヒーローに変身する多重人格の青年(オスカー・アイザック)の前に立ちはだかる、カルト教団の指導者アーサー・ハロウ役で登場する。ハロウは人の善悪を見極めることができ、悪人を断罪していくのだが、未来で悪事を働く可能性のある者まで殺害するなど、行き過ぎた正義を執行するかなりヤバい人物。バトルシーンのような派手な見せ場はないが、緩やかな立ち居振る舞いや慈悲深くも鋭い眼、諭すような口調で多くの賛同者を集めるカリスマ的な要素も兼ね備えている。最終回となる第6話では意外な姿で登場するので、そちらも楽しみにしてほしい。
不気味なマスクで素顔を隠し、予測不能な行動で観る者に恐怖をもたらす『ブラック・フォン』
ホーク出演の最新作『ブラック・フォン』は、1970~80年代アメリカを震撼させた児童誘拐殺人事件をモチーフに、謎の誘拐犯に監禁された少年の決死の脱出劇を描いたスリラー。ホークが演じたのは、不気味なマスクで素顔を隠したサイコな連続誘拐犯グラバーである。劇中でまともに素顔を見せることはなく、マスク越しの独特のセリフ回しや突然キレる予測不能な行動で作品に緊張感を与えている。一方で、上半身裸でイスに腰掛け、腕組みをしたまま仁王像のように少年を見張るが、ついウトウトしてしまうなどコミカルな場面も。この誘拐犯の詳細なバックグランドが明かされることはないが、そのことが不気味さに拍車をかけており、ホーク自身も底知れない奥行きを感じさせるキャラクターに仕立て上げている。
ほかにもあらゆる犯罪が合法となる晩に家族のために戦うエリートを演じた『パージ』(13)、蘇生術で生き返った殺し屋が大暴れする『リミット・オブ・アサシン』(17)、人質と不思議な連帯感で結ばれる不器用な悪党を独特のテンションで演じた『ストックホルム・ケース』(18)でもぶち切れ演技を披露したホーク。唯一無二の演技派が見せる狂気に満ちたキャラクターの登場を今後も楽しみにしたい。
文/神武団四郎