好きにならずにいられない。『エルヴィス』で蘇る“キング・オブ・ロックンロール”、その伝説の数々
唯一無二のキング・オブ・ロックンロール!
ハリウッドから音楽の世界に戻ることを決意したエルヴィスは、NBCの特別番組「エルヴィス」で多くのナンバーを披露し、歌手としての大復活をとげる。この番組は伝説となり、後に「’68カムバック・スペシャル」と呼ばれ、2018年には50周年記念盤DVDボックスが発売されるなど、エルヴィスの最高のパフォーマンスが時代を超えてアピール。そして1969年からはラスヴェガスにオープンしたインターナショナル・ホテルを中心に公演を行うようになり、ヒット曲とともにゴスペルなどでカリスマ的な歌唱力を発揮。先述のジャンプ・スーツとともに世界最高のショーとして人々の記憶に刻印された。
このように歴史に残るスーパースターとなったのは、エルヴィス本人の実力とカリスマ性もさることながら、生涯のマネージャーとなったトム・パーカー大佐の功績も大きな要因。エルヴィスの才能をイチ早く発見し、レコード会社の移籍に始まり、日本をはじめ世界各国へのコンサートの衛星中継、さまざまなグッズ販売など当時としてはチャレンジングな発想も大胆に実行。その一方で、エルヴィスの仕事をすべてコントロールし、ギャラの半分を“せしめていた”疑惑があったりと、大佐との愛憎関係もカリスマが形成されるうえで特殊な役割を果たした。
そのほかにも、妻プリシラとの複雑ながらも深い夫婦の絆、謎めいた死の真相など、今も語り継がれるエピソードは数知れない。いまだに「じつはエルヴィイスは生きている」などという都市伝説がささやかれたりもする。娘のリサ・マリーはマイケル・ジャクソン、ニコラス・ケイジとの結婚歴があり、その娘、つまりエルヴィスの孫、ライリー・キーオは俳優として活躍しながら、2022年のカンヌ国際映画祭で新人監督に与えられるカメラ・ドールを受賞。映画監督としての将来が楽しみに…と、エルヴィスの血は受け継がれている。
唯一無二のキング・オブ・ロックンロールという存在。その真実にふれる意味でも映画『エルヴィス』は必見だ。
文/斉藤博昭