「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022」、才能が光る国際コンペティション10本をチェック

コラム

「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022」、才能が光る国際コンペティション10本をチェック

冷戦下の80年代、ラジオ放送に青春を懸けた若者たち『マグネティック・ビート』(フランス、ドイツ)

『マグネティック・ビート』(21/フランス、ドイツ)
『マグネティック・ビート』(21/フランス、ドイツ)

冷戦下の1980年代、ブルターニュ地方の田舎町で、無許可のラジオ放送に没頭する兄弟。兄のジェロームはカリスマ性のあるDJ、弟のフィリップは技術面を担っていたが、徴兵のため、フィリップは西ベルリンへ渡ることに。冷戦下の西ベルリンの様子、そして、1人の女性と兄弟との三角関係が映し出されていく。
ヴァンサン・マエル・カルドナ監督は、名門フランス国立映画学校フェミスの出身で、卒業制作『Coucou-les-Nuages』(10)がカンヌ映画祭シネフォンダシオンの第2席を獲得した。本作で長編デビューし、2021年の同映画祭監督週間でSACD賞を受賞した。また、セザール賞では新人監督賞を受賞し、フィリップ役のティモテ・ロバールも、有望若手男優賞にノミネートされた。

エリート女性が自身の生き方を見つめ直すコメディ『クイーン・オブ・グローリー』(アメリカ)

『クイーン・オブ・グローリー』(21/アメリカ)
『クイーン・オブ・グローリー』(21/アメリカ)[c]Anthony Thompson

ガーナ系アメリカ人のサラは、大学で博士課程を取得中だが、そのキャリアを捨て、妻のある恋人とオハイオへ越そうとしていた。ところが母が急死し、ブロンクスにある書店の経営者となる。本作は、エリート女性が自身の生き方を見つめ直すという、“アメリカあるある”満載のコメディ。
2021年のトライベッカ映画祭にてプレミア上映され、最優秀新人監督賞を受賞した。主演を務め、脚本を手掛けたうえに監督デビューも果たしたナナ・メンサーは、Netflixの「ザ・チェア~私は学科長~」に出演した若手女優だ。本作はインディペンデント・スピリット賞でも新人作品賞にノミネートされ、書店員ピットを演じたミーコ・ガットゥーゾも助演男優賞にノミネートされた。

LGBTQの子どもの問題にフィーチャー『揺れるとき』(フランス)

『揺れるとき』(21/フランス)
『揺れるとき』(21/フランス)[c]Avenue_B

10歳のジョニーは東フランスの貧しい地域で、シングルマザーの母と2人の兄妹と共に暮らしていたが、ある時、都会から赴任してきた新任教師に心惹かれていく。カンヌ映画祭批評家週間でプレミアされた本作は、多感で敏感な少年の成長や恋の目覚めを主題としつつ、ヤングケアラーやLGBTQの子どもの問題といった現代的なテーマも盛り込んでいる。
本国では「Drôle de famille!」などのテレビシリーズで俳優として知られるサミュエル・セイス監督は、名門フランス国立映画学校フェミスで監督した短編『Forbach』(08)がカンヌ映画祭シネフォンダシオン第2席、クレルモン=フェラン国際短編映画祭ではグランプリを受賞している。

平和な生活を送るケチュア族の老夫婦に危機が訪れる『UTAMA ~私たちの家~』(ボリビア、ウルグアイ、フランス)

『UTAMA ~私たちの家~』(22/ボリビア、ウルグアイ、フランス)
『UTAMA ~私たちの家~』(22/ボリビア、ウルグアイ、フランス)[c]AlmaFilms

ボリビアの高地で、ケチュア族の老夫婦ビルヒニオとシサは何年もの間、ラマと共に穏やかな日常を送っていたが、ある時、村が未曾有の干ばつに見舞われる。標高4,000mを超える土地もあるというボリビアの広大な高原がひび割れた映像だけでも、この土地で生きることの過酷さが伝わってくる。また、国の正式名「ボリビア多民族国」が示すとおり、言語も異なる先住民たちが、いまでも自身のルーツに従って生活していることも、作品から感じ取れる。
今年のサンダンス映画祭ワールドシネマ・ドラマティック部門でグランプリに当たる審査員賞を受賞した本作は、ボリビア生まれのアレハンドロ・ロアイサ・グリシの長編デビュー作で、自ら脚本も手掛けている。

拝金主義の現代社会への風刺がたっぷり『ワイルド・メン』(デンマーク、ノルウェー)

『ワイルド・メン』(21/デンマーク、ノルウェー)
『ワイルド・メン』(21/デンマーク、ノルウェー)[c]Rasmus Weng Karlsen


ミッドライフクライシスを抱えたマーティンは、いまの生活から逃れ、森の中で原始人の服を着て暮らし始めた。しかし、ケガをした麻薬の運び屋が森に迷い込んできて、共に追われる身となってしまう。北欧版『ファーゴ』(96)といった趣の作品だが、拝金主義の現代社会を一喝する風刺のきいたクライムバディムービーに仕上がっている。
札幌国際短編映画祭とショートショート フィルムフェスティバル & アジアで上映された短編『パフ・パフ・パス』(13)のトマス・ダネスコフ監督は、本作の国内外での成功により、一気に注目監督となった。主演を務めるラスムス・ビョーグとザキ・ユーセフなど、北欧で活躍する人気俳優たちの共演も見もの。

上映チケットは日時および座席指定券となり、1回の上映につき、1枚のチケットが必要となるが、コンペ作品のフリーパスも現在発売中。また、オンライン配信は単品レンタルと見放題プランを選べられる。詳しいチケット情報、各上映のスケジュール詳細は公式ホームページを確認してほしい。

文/山崎伸子


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■SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022
日程:【スクリーン上映】7月16日(土)~7月24日(日)、【オンライン配信】7月21日(水)~7月27日(水)
会場:SKIPシティ 彩の国 ビジュアルプラザ 映像ホールほか
内容:国際コンペティション、国内コンペティション(長編部門、短編部門) ほか
URL:http://www.skipcity-dcf.jp/
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