笑福亭鶴瓶が語る、グルーへの愛着と“師弟愛”への共感「師匠に憧れて、この世界に入った」
本作には、ミニオンにも“師匠”が登場する。グルーが何者かにさらわれてしまったことから、ミニオンたちは「ミニボス」と慕うグルーを助けようと奮闘。その最中で、ミニオンたちにカンフーを仕込むのがマスター・チャウ(声:渡辺直美)だ。
「声優をやっている時は、グルーの出ている部分しかわからないから。そうか、ここでミニオンたちはカンフーを習いよんねんな、とかベル・ボトムに追い回されてたんやな、とか映画を観てわかる。(渡辺)直美も、ベル・ボトム役の尾野真千子も、うまいよなあ。みんな、キャラクターに似て見えてくる。ワイルド・ナックルズだって、いっちゃんに似てへん?だんだんいっちゃんに見えてくるもん(笑)」。
そんなワイルド・ナックルズは、おそらくグルーが初めて憧れた大人だろう。鶴瓶にとって、“子どものころに憧れた大人”は誰なのだろう。「子どものころってわけやないけど…やっぱりうちの師匠(六代目笑福亭松鶴)ですよね。師匠に憧れて、この世界に入ったんで。よう考えたら、うちの師匠は68歳で亡くなったんですけど、俺はいま70歳。年だけ超えてしまったんですよね。師匠は、上方落語協会を築いた存在。やっぱりすごいなあと思います」。
故六代目笑福亭松鶴師匠に鶴瓶が出会ったのは、20歳のころだ。「その時、師匠は53歳。53歳いうたらね、まだそんな大人ちゃいますよ。人としてみんなに慕われるとかはあってもね。師匠は、落語家たちの拠りどころを、上方落語協会を作っちゃった。三代目桂米朝、五代目桂文枝、三代目桂春団治といたけども、皆10歳近く年下でしたから。ああ、あれぐらいの年でこんなことをやっていたんやと思うと、カッコいいですね」。
「余計いいじゃないですか、“じいじ”じゃなくて、“グルー”や思って楽しんでるなら」
インタビュー当日、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンで行われたイベントでも多くの子どもたちから歓声を浴びていた鶴瓶。12年間グルー役を務めてきて、年々、子どもたちにグルーとして声をかけられることも増えたそう。
「声をかけられると、やっぱりうれしいですね。でも、うちの孫たちは僕のことをグルーだと認識してないんですよ。いま、小学校2年と5年生なんですけど。昔の『ミニオンズ』シリーズを観とったんですよ。字幕に合わせて、後ろでグルー役の吹替えをしたんです。贅沢や思うでしょう?孫たちには、『しっしっ』て邪険にされましたから(笑)」と言いつつ目尻を下げる。「『これおじいちゃんやで』とか言うのも野暮だし、いらんことせんとこ、と思いましたね。余計いいじゃないですか、“じいじ”じゃなくて、“グルー”や思って楽しんでるなら」。
『怪盗グルーのミニオン大脱走』(17)では双子の兄弟ドルーの存在が明かされた。本作では、なぜグルーが月を盗もうと思うにいたったのか?など、『怪盗グルーの月泥棒 3D』(10)につながるエピソードもたっぷり登場する。シリーズを重ねるごとにグルーの人生が見えてくるが、今後の展望を聞いてみると、「…あんた、よう覚えとるな。グルーやのに、俺のほうが忘れとるわ(笑)」と鶴瓶。「もう、グルーのおかんのスピンオフ作るしかないですかね?」と筆者が言うと、「やかましいわ(笑)」と笑いながらも、「シリーズでずっと主人公やのに、グルーのグッズが全然ない。もっとあってもいいはずや。ミニオンばっかり。まずはそこからや!」とグルー役への愛着をにじませた。
取材・文/編集部