富野由悠季『Gのレコンギスタ』完結に笑顔。次回作は「なにも考えていません…というのはほとんど嘘です」
「機動戦士ガンダム」の原作者、富野由悠季が総監督、脚本を手掛けた劇場版『Gのレコンギスタ IV』「激闘に叫ぶ愛」(7月22公開)と、劇場版『Gのレコンギスタ V』「死線を越えて」(8月5日公開)の「〜みんなで見ようIVVのG〜」と題した完成披露上映会が17日、新宿ピカデリーにて開催。主演のベルリ・ゼナム役の石井マーク、アイーダ・スルガン役の嶋村侑、ノレド・ナグ役の寿美菜子、マスク役の佐藤拓也、クリム・ニック役の逢坂良太、マニィ・アンバサダ/ノベル役の高垣彩陽らが、総監督の富野由悠季と共に登壇した。
テレビアニメ放送開始から8年、ついに「Gのレコンギスタ」が完結することについて石井は「『G-レコ』での最初の舞台挨拶がフラッシュバックし、あれから8年経ったのか…という想いです」としみじみ。「4部と5部で、いままでとは違うベルリになりました」とアフレコを振り返り、ベルリへの想いを語り出すと、富野監督が「このあたりで(しゃべるのを)やめさせないと、ずっと続くぞ」とツッコミ。優しい眼差しでうれしそうに石井の話に耳を傾けながらも、頃合いをみて「次!」と指示出しをし、笑いを誘っていた。佐藤は「マスク越しにも皆さんの表情から楽しんでいただけたことが伝わります」とニッコリ。嶋村が「マスクだけにマスク!」と合いの手を入れると、富野監督も「いま、マスクが話してますよ」と付け加えるなど、絶妙な掛け合いで開始早々トークを盛り上げていた。
逢坂は、「クリム・ニックがとても濃いキャラクターなので、久しぶりに演じてもすんなりと入れました」とアフレコを振り返り、「完成版を早く観たいという期待感はありましたが、こうしてメインキャストが揃うと『終わりたくない』という気持ちも出てきています」と複雑な心境を明かしていた。寿もアフレコで完結を実感したようで、「帰る場所の印象があった『G-レコ』でしたが、今回『8年間お疲れ様でした』と富野監督から言われた時に、本当に終わりなんだと実感しました。実感したけれど、実感できていないというか…」とまだ受け止めきれていない胸の内を説明した。
いつも自分のなかに『G-レコ』があった8年だったと話した高垣は「富野監督から『あなたの声だったからマニィはこういう人生になりました』とおっしゃっていただき、感激しました、ありがたかったです。テレビシリーズのころから『未来に残していく』という話をしていました。これから生まれる子どもたちが、15年後にこの作品を観るかもしれないと想像すると、後世に残り続ける作品なんだと胸がいっぱいになります」と笑みを浮かべていた。
スタッフ試写の際に、劇場版『G-レコ』テーマソング担当のDREAMS COME TRUEの中村正人から「これが始まりですね」と声をかけられたという富野監督。「アニメの仕事をやっていると、0号(試写)で完成を観た瞬間に『終わった』と思うもの。50年その心理でやってきたのですが、(リハを重ね)明日からライブが始まる、という方にとってはここからがスタートなんだと教えてもらいました。いま、皆さんの顔から、その言葉を実感しています」とニッコリ。この日も劇場で本編を観たという富野監督はドリカム中村の言葉を受けて「えらく緊張して困ったけれど、『じいちゃん、頑張ってるかもしれないぞ』とも思えました。それは、こうやって朝早くから完成版を観てくれるみなさん、そして舞台挨拶に来てくれるキャストのみんな、すべての人のお手伝いのおかげです」と語り、帽子をとり、深々とお辞儀をしながら感謝の言葉を伝えた。トークは着席したままで行う予定だったが、富野監督はこの挨拶以降、ずっと立ったまま、時々立ち位置を少し移動して、場内とキャスト陣をうれしそうに見渡していた。
イベントでは、テレビ版と劇場版の違いや大好きなシーンについて自由に語る場面も。上映後のイベントだったため、具体的なシーンやセリフに触れつつ、トークを展開。ノレドの愛の形については寿が「未来が明るくなった」と微笑むと、嶋村が「ノレドの愛はいやらしさが感じれない。ヘルシーな愛のかたち」とコメント。すると富野監督が「いろいろな意見が出たので、あのかたちになるまで半年かかっています。いまのかたちでOKなのか、かなり自信がなかったけれど…」としながらも「エロくなりすぎても、ヘルシーになりすぎてもいけない。悩んでアレンジしたものが、そう理解されてうれしいです」と満足の様子だった。愛のかたちについては逢坂も言及。クリムとミックの関係性の変化から「普段は尻に敷かれながらも、いざというときに(守るために)動けるのが理想的。既婚者になったからこそ理解できます」と笑顔で解説していた。
次回作の構想を訊かれると「『80歳のおじいちゃんになにを要求するんだ!』という気持ちです。穏やかに死なせてくださいとお願いしています(笑)。なにも考えていません…というのはほとんど嘘です」と茶目っ気たっぷりに語った富野監督にこの日一番の拍手が贈られる。そして、締めの挨拶では「嘘でもいいから応援していただけるとうれしいです。今後のこともあるので…」と観客の次回作への期待を煽りながら、終始笑顔と和やかなムードに包まれたイベントは幕を閉じた。
取材・文/タナカシノブ