これぞ田中圭の“癒し力”!最新作『ハウ』や「おっさんずラブ」で見せるトロける笑顔
田中圭の真骨頂!?『ハウ』で演じた平凡なキャラクターでこそ光輝く“癒し力”
このように卓越した演技力で幅広い役柄を演じてきた田中だが、その癒し力が存分に発揮されているのが『ハウ』だ。彼が演じる市役所職員の赤西民夫は物語が始まって早々に婚約者から別れを切り出されてしまう冴えない男だが、どこにでもいる平凡なキャラクターだからこそ、心情を丁寧に描きだす彼の深みのある演技が際立つ。悲しい過去がある保護犬のハウを丸ごと愛情で包み込む本作の民夫役は、彼の真骨頂ともいうべきキャラクターなのだ。
本作は、お互いをかけがいのない存在とする青年と保護犬の姿を活写したバディムービーとしても絶品だ。民夫はハウの真っすぐな愛情に癒され、彼のモノクロだった世界はカラフルに彩られるが、両者の強い結びつきを田中は満面の笑顔によって体現。ハウが民夫の心の支えになっていることを表情や体にまとう雰囲気に至るまで体全体で完璧に表現している。
そんな田中の渾身の演技を全身で受け止めた俳優犬のベックもすばらしい。名作『南極物語』(83)や『クイール』(03)など名だたる動物映画でドッグトレーナーを務めた宮忠臣から本格指導を受けたベックは、本作で田中のみならず監督も唸らせる演技を披露。そのベックの“癒しの存在感”と田中の圧倒的な“癒しの演技”が合わさり、相乗効果を生んだのは間違いない。
撮影にあたり、自身もまた大の犬好きだという田中はやんちゃ盛りだったベックに根気よく優しい声をかけ続け、芝居を超えた関係性を築いたという。ハウはひょんなことから民夫と遠く離れ、798kmもの距離を「会いたい」という一心でひた走ることになるのだが、劇中に挿入されるハウのモチベーションとなる“民夫との幸せなひととき”に圧倒的なリアリティを感じるのは、田中とベックが演技を超えて結んだ信頼関係がスクリーンから伝わってくるからだろう。その美しくも優しいキラメキを、俳優、田中圭の“癒しオーラ”と共に劇場で堪能してほしい。
文/足立美由紀
※記事初出時、ドラマ「おっさんずラブ」の放送年表記を2016年としておりましたが、誤りであったことから、当該部分を修正させていただきました。訂正してお詫びいたします。