クォン・サンウ、キム・テリらが出演する珠玉の名作から、激動の時代を歩んできた韓国を知る!
軍事政権下での高校生たちのみずみずしい初恋と暴力の対比が印象的な『マルチュク青春通り』
建国以来、大統領を務めていた李承晩が1960年の「四・一九学生革命」によって退任した翌年、軍部の朴正煕(パク・チョンヒ)らがクーデターを敢行し、軍事政権の時代が始まる。大統領となった朴正煕は1971年に憲法を改正して三選を果たすと、翌年には非常戒厳令を布告して国会を解散。強大な権力を自身に集中させる「維新体制」を作り上げた。
長期にわたる朴正煕政権末期の1978年を舞台にしたノスタルジックな青春映画『マルチュク青春通り』(04)では、この時代の高校生たちがどんな毎日を送っていたのかを、主人公と同世代のユ・ハ監督がリアリティたっぷりに見せていく。開発ブームに沸くソウル・江南地域にやってきた転校生ヒョンス(クォン・サンウ)は、登校途中のバスの中で女子校に通うウンジュ(ハン・ガイン)にひと目惚れをするが、なかなか思いを告げることができない。そんななか、同じクラスのウシク(イ・ジョンジン)も彼女に好意を持っていることに気づく…という初恋の物語が、暴力にあふれていた男子校の日常のなかで綴られていく。特に目を引くのは、軍服を着て学生たちを厳しく指導する教練担当教師。“教練”とは、北朝鮮との緊張関係が続くなか、高校生たちに対して軍事的な訓練を行う科目だったという。
デビュー当時から“モムチャン(美しい肉体)”俳優として人気を集めてきたクォン・サンウが、意外にも内気なキャラクターに扮しているのも見どころ。アクションスターのブルース・リーに憧れているもののケンカは苦手で、それでも友だちのためならヤンキーに立ち向かい、ラジオ局へ手書きのハガキを送り、お気に入りの洋楽で気持ちを伝えようとするところが愛しさを感じさせる。さらに、思いを寄せるウンジュらと出かけるディスコのシーンも懐かしさ満点だ。そんな彼が“覚醒”して挑むアクションシーンからも目が離せない。
民主化運動を背景にした若者たちのリアルを描く『サニー 永遠の仲間たち』
18年間にわたって最高権力者の座にあった朴正煕は1979年10月26日に側近の金載圭(キム・ジェギュ)の放った銃弾に倒れ、街には一時、「ソウルの春」と呼ばれる開放的な雰囲気が生まれた。しかし、同年12月に全斗煥(チョン・ドゥファン)、盧泰愚(ノ・テウ)らを中心とする軍部がクーデターを起こし、政治の実権を握る。彼らはさらに1980年5月17日に非常厳戒令を拡大して政治活動や集会、デモを禁止し、翌日には政治家や民主化運動家を連行した。同じ日、光州では学生や市民が民主化を要求するデモを敢行したが、戒厳軍が武力で鎮圧し、多くの死傷者を出した光州事件が発生。全斗煥は同年に大統領に就任し、軍事政権の時代が続いた。
『サニー 永遠の仲間たち』(11)では、そんな80年代に高校生活を送った主人公ナミ(ユ・ホジョン)が25年を経て友人チュナ(チン・ヒギョン)と再会し、余命短い彼女のために疎遠となっていた仲間を捜していく。『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(18)として日本でもリメイクされたこの映画では、“サニー”という名のグループを結成していきいきと飛び回る高校生たちの背後で80年代の様子が描かれている。
高校生のナミ(シム・ウンギョン)が家で食事をするシーンではテレビに全斗煥大統領が映り、大学生である彼女の兄は軍事独裁に反対する運動に身を投じている。また、ナミと仲間たちが敵対するグループとケンカをするために出かけた街中では、デモ隊と機動隊が衝突する。90年代の東京を舞台とした日本版とは背景が大きく違い、軍事政権下の80年代を生きる韓国の若者が見た世界を知ることができる。本作の監督であるカン・ヒョンチョルは、その後、朝鮮戦争中の捕虜収容所を舞台にした『スウィング・キッズ』(18)も手掛けている。
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