原点『ジュブナイル』から22年…『ゴーストブック』の山崎貴監督が、“時間”をテーマに映しだすもの
『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズや『DESTINY 鎌倉ものがたり』(17)、『アルキメデスの大戦』(19)など次々にヒット作を生みだしている山崎貴監督。単独監督作15本目となる『ゴーストブック おばけずかん』(公開中)は、不思議な世界で多彩なおばけに立ち向かう子どもたちを描いた異世界冒険ファンタジーだ。
一樹(城桧吏)、太一(柴崎楓雅)、サニー(サニーマックレンドン)の3人組は、不思議な古本屋の店主(神木隆之介)からどんな願いも叶う「おばけずかん」を手に入れた。ところが願いごとを叶えるためには命がけの試練のクリアが必須。突然異次元へと送り込まれた3人は、臨時担任の瑤子先生(新垣結衣)や一樹たちのクラスメイトの湊(吉村文香)を巻き込み大冒険を繰り広げる。
原作は小学生を中心に大ヒットしている童話「おばけずかん」シリーズ。山崎監督は自らストーリー原案・脚本を手掛け、様々なおばけを紹介するショートストーリー仕立ての原作を、3人の少年たちの物語として映画化した。
まず目を奪われるのが一樹たちが迷い込む異世界異次元のロケーションだ。一見すると3人が暮らすのどかな町そのものだが、看板の文字は得体の知れない象形文字に、家々も屋根がゆがみ壁に車が突き刺ささるなどでたらめのコラージュのような奇妙な形に変化。彼ら以外の人影はなく、町から出ようとするとそこは断崖絶壁…夢が具象化した世界を描いた『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(84)を思わせる不条理な世界になっている。
異次元の町に棲んでいるのは個性豊かなおばけたち。「おばけずかん」に詳しい図鑑坊をはじめ、山彦や一反木綿、百目といったおなじみのおばけから、旅する雲梯、身代わりおばけ、ラスボス的なジズリと個性豊かなおばけが次から次に登場する。山崎監督による動きを意識したキャラデザインや性格付けもユニークで、原作「おばけずかん」のおもしろさがしっかりと受け継がれている。