話題のマルチバースを取り入れたシニカルな物語がおもしろい!大人向け奇天烈アニメ「リック・アンド・モーティ」の名エピソードたち

コラム

話題のマルチバースを取り入れたシニカルな物語がおもしろい!大人向け奇天烈アニメ「リック・アンド・モーティ」の名エピソードたち

世界中の人々が“クローネンバーグ”化してしまう「ホレ薬」

そんな「リック・アンド・モーティ」からマルチバースの妙味を堪能できる名作エピソードをチェックしていきたい。まず紹介したいのが、この作品で初めてマルチバースについて言及されたシーズン1の第6話「ホレ薬」だ。

片想いの相手にモテるため、リックに頼んで惚れ薬を作ってもらったモーティ。薬の効果は抜群だったが、インフルエンザウイルスと共に広がりすぎてしまい、モーティは学校中の人たちに迫られてしまう。この危機にリックは、カマキリのDNAを使用した解毒薬を散布するも失敗。感染した人たちはまるでデヴィッド・クローネンバーグの映画に出てきそうなグロテスクなモンスターに姿を変え、世界は世紀末を迎えてしまう…。

このままバッドエンドを迎えるのかと思いきや、ここからがこのエピソードの真骨頂。なんと世界を元通りにすることをあきらめたリックは、不慮の事故で死んでしまったリックとモーティがいる別次元へとモーティと訪れ、この次元の彼らとして生きていくことを選ぶのだ。

自らのせいでもたらされた世界の危機を救うのではなく、別の次元へ逃げて一件落着という自己中心的かつブラックすぎる幕切れとともに、マルチバースが存在する世界であることが鮮やかに明かされたこの名エピソード。多くの人が「リック・アンド・モーティ」のヤバさを思い知ることになった。

遺伝子レベルでハエと融合してしまった男の恐怖を描くデヴィッド・クローネンバーグ監督作『ザ・フライ』
遺伝子レベルでハエと融合してしまった男の恐怖を描くデヴィッド・クローネンバーグ監督作『ザ・フライ』[c]Everett Collection/AFLO

多次元のリックとモーティが集まった要塞都市が描かれる「リックとの遭遇」

よりいっそうマルチバースの設定を生かしているのが、シーズン1の第10話「リックとの遭遇」。このエピソードは、リックが朝食を食べていると別の次元から現れたリックとモーティによって殺されてしまうという衝撃の展開から幕を開ける。

実は殺されたのは、物語がおもに進行している地球C137のリックとは別次元のリック。しかし、C137のリック&モーティもまた、家族と朝食を食べていたところ、突然ポータルから現れたリック軍団によって“評議会”へと連れて行かれ、多次元のリック殺しの罪に問われてしまう。間一髪逃れたリックとモーティは、濡れ衣を晴らすため、事件を起こした真犯人を捜すというストーリーが繰り広げられていく。

評議会が開かれる要塞都市には、あらゆる次元のリックとモーティが集結しており、なかには見た目が違うものや、性格が異なるものも。そんな次元の違いによる個体差が物語の真相、オチへとつながっており、マルチバースの妙味が存分に味わえるエピソードとなっている。

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