話題のマルチバースを取り入れたシニカルな物語がおもしろい!大人向け奇天烈アニメ「リック・アンド・モーティ」の名エピソードたち
現実の社会問題ともリンクした名エピソード「アトランティス最高!」
そしてもう1つ、「リックとの遭遇」と合わせてチェックしたいエピソードが、シーズン3第7話の「アトランティス最高!」だ。このエピソードはシーズン3の第1話「絶品の四川風ソース」で、C137のリックとモーティの活躍により、リック独裁が打ち倒されたあとの要塞都市が舞台。しかし、C137のリックとモーティは物語にまったく関与しないというユニークな作りになっている。
独裁政権が崩壊した要塞都市では民主制が敷かれたものの、リックとモーティではリックのほうが基本的には賢いため(次元によって個体差はある)、モーティの多くは貧困層だったり、リックの助手となる教育を受けたりと、支配と被支配の関係がハッキリと線引きされていた。
そんななか、要塞都市の次期大統領を決める選挙が開催。泡沫候補だと思われていたあるモーティが、演説でリックとモーティの間にある分断やリック同士の格差など都市の問題について力説すると、一躍有力候補に躍り出るのだが…。
リック同士でも微妙な差異があり、そのことが格差や不満につながったり、リックとモーティとの間で差別、分断が横行していたり…と、あらゆる次元からリックとモーティが集まっているからこそ生じる問題が、現実社会の問題と重ね合わせて語られるこのエピソード。マルチバースの設定を生かしながら、鋭い社会性も帯びた物語は高く評価された。
マルチバース以外にも、バーチャル世界や記憶を題材にしたSF的なおもしろさに満ちたエピソードから、前述のリックがピクルスになって大冒険するという狂気的なエピソードまで、一筋縄ではいかないようなストーリーが楽しめる「リック・アンド・モーティ」。時にはとことんくだらなく、時には深く考えさせられるような唯一無二の世界観をぜひ味わってみてほしい。
文/武藤龍太郎