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『プレデター:ザ・プレイ』の圧倒的"リアル"を見逃すな!ホンモノ志向で描かれる、アクションや文化描写

コラム

『プレデター:ザ・プレイ』の圧倒的"リアル"を見逃すな!ホンモノ志向で描かれる、アクションや文化描写

原始的だからこそ“リアル”…戦術を駆使するアクションシーン

そんな本作いちばんの見どころは、やはりアクションだ。技術力でも劣り、ハンターとしても半人前のナルは、プレデターにどう立ち向かうのか。男たちに比べ力が弱く実戦経験もない彼女は、その弱点を気転を効かせることで補ってきた。投斧の精度が悪ければ、斧に縄を結びつけ斧を素早く手元に引き寄せるなど、彼女の数々の工夫が映画の後半で活きてくる。相手をよく見て動きを予測するのもナルの得意な戦術で、そんな彼女が繰り出す頭脳プレーは銃火器メインのバトルを繰り広げてきた過去のシリーズにはないリアリティをもたらした。

プレデターに技術力で劣るナルは、戦略を組み立てて対抗!(『プレデター:ザ・プレイ』)
プレデターに技術力で劣るナルは、戦略を組み立てて対抗!(『プレデター:ザ・プレイ』)[c] 2022 20th Century Studios

対するプレデターで特徴的なのは、面長な面構えを含めスリムなシェイプ。今作では元バスケットボール選手デイン・ディリエグロがスーツを着て演じており、206cmの彼の体型に合わせた細マッチョな姿は肉厚な過去作とは一線を画すしなやかさ。スーツは動きやすく作られているようで、すばしこく動きまわるナルや馬を駆るタアベとのバトルをはじめ躍動感あるアクションを見せつける。その戦いぶりもコマンチに合わせたようにリスト・ブレイドやソードを多用した接近戦で、手首を使ってブレードをクルッと回転させるなど細かいしぐさもかっこいい。肩のプラズマ砲がボウガン仕様になっているのもポイントだ。

左からジェーン・マイヤーズ、タアベ役のダコタ・ビーヴァーズ、ダン・トラクテンバーグ監督、ナル役のアンバー・ミッドサンダー、プレデター役のデイン・ディリエグロ
左からジェーン・マイヤーズ、タアベ役のダコタ・ビーヴァーズ、ダン・トラクテンバーグ監督、ナル役のアンバー・ミッドサンダー、プレデター役のデイン・ディリエグロ[c] 2022 20th Century Studios


そんな今作のアクションはプレデター戦だけではない。人類が自然の一部であったこの時代、ライオンやクマのテリトリーに立ち入った者は、彼らの攻撃にもさらされる。人間たちと野獣たちとの息詰まる戦いや、プレデターがクマと繰り広げる激しいバトルにも注目してほしい。

現代にも通ずる“リアル”な人間ドラマ

気高い戦士として生きることを望む、コマンチ族の女性ナルをアンバー・ミッドサンダーが演じている(『プレデター:ザ・プレイ』)
気高い戦士として生きることを望む、コマンチ族の女性ナルをアンバー・ミッドサンダーが演じている(『プレデター:ザ・プレイ』)[c] 2022 20th Century Studios

コマンチの女性の役割である飯炊きや薬草作りを強いられているナルは、狩りに出ることを切望する少女。顔には戦士を真似たフェイスペイントをし、家事の合間に時間を見つけては狩りや格闘の訓練に打ち込んでいた。そんな妹をコマンチ最高のハンターであるタアベは優しく見守るが、彼もまた女性がハンターになることにどこか抵抗を感じていた。今作はプレデターとの戦いを通し心身ともに成長していくナルや、兄妹の絆にスポットを当てたリアルな人間ドラマも魅力。ジェンダーの描き方も“女性か男性”の2択ではなく、本人のポテンシャルの高さで困難に立ち向かうナルの姿にきっと胸を打たれるはず。

本作の撮影は、カナダの広大な大地を中心に行われた(『プレデター:ザ・プレイ』)
本作の撮影は、カナダの広大な大地を中心に行われた(『プレデター:ザ・プレイ』)[c] 2022 20th Century Studios

そんな人間ドラマを支えた映像にも注目したい。撮影監督のジェフ・カッターが「私たちのアプローチは、自然を尊重すること、自然光を尊重すること、そして、現実味のある環境に登場人物たちを置くことでした」と語る通り、繊細な表情やしぐさによる感情表現を多用した本作は、テントのすき間から射し込む日の光、松明など自然光を意識した映像もキャラクターの内面をフォロー。撮影はカナダの原住民が代々受け継いできた土地で行われ、雄大な自然描写の数々にあらためて人間の小ささや命の脆さを思い知らされる。神秘的な大地を捉えたオープニングから、全編にあふれる美しい映像にも目を奪われることだろう。

「プレデター」シリーズの特徴は、プレデターを迎え撃つ人間側の視点に特化したところ。プレデターについての情報も、パズルのピースのように断片的な提示にとどめている。そのため各作品とも1本の映画として成立しており、シリーズのどこからみても楽しめるのも魅力だ。(一方で、実はシリーズの2作目まで観ておくとより楽しむことができる、“ある仕掛け”があることはお伝えしておきたい。)時代設定からすると、1700年初期が舞台の『プレデター:ザ・プレイ』がもっとも古い時代の物語だが、トラクテンバーグ監督が早くも続編制作について言及しているとの情報も。まずは今作からスタートし、あらためてディズニープラス「スター」で配信中の全シリーズを見直すことで、どっぷりプレデターの世界に浸ってほしい。

文/神武団四郎

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