諸星大二郎、クトゥルフ神話、霊体ミミズ…白石晃士が語る、POV回帰作に詰まった“白石ワールド”の全貌|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
諸星大二郎、クトゥルフ神話、霊体ミミズ…白石晃士が語る、POV回帰作に詰まった“白石ワールド”の全貌

インタビュー

諸星大二郎、クトゥルフ神話、霊体ミミズ…白石晃士が語る、POV回帰作に詰まった“白石ワールド”の全貌

ジャパニーズモキュメンタリスト、ここに復活。『オカルト』(08)やPOVホラーシリーズ「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」などで知られる白石晃士監督がWOWOWと初タッグを組み作り上げた、オリジナル連続ドラマ「オカルトの森へようこそ」(全6話)が、先の読めない展開で話題となっている。

令和版「コワすぎ!」ともいえる本作では、白石晃士自身が扮する黒石光司ディレクターと助監督の市川(堀田真由)が傑作ドキュメンタリーを撮影すべく、異界とつながる祟りの森へと殴り込み。なにかに憑依された女(筧美和子)、行方不明の少女を探すスーパーボランティア(宇野祥平)、ホスト風霊能者(飯島寛騎)ら奇々怪々な人々と出会いながら、禍々しき深淵をのぞき込んでいく。

これまでの様々な白石作品を彷彿とさせるシーンが続出
これまでの様々な白石作品を彷彿とさせるシーンが続出[c] 2022WOWOW・KADOKAWA・ひかりTV

本日23:30から最終話「傑作誕生」が放送、配信されるのに合わせ、本稿では『死霊のはらわた』『グーニーズ』『血を吸うカメラ』『遊星からの物体X』などの諸作、そして諸星大二郎石井隆、クトゥルフ神話など、本作をより深く理解し楽しむための重要キーワードをちりばめながら、白石ワールドの集大成的作品となった「オカルトの森へようこそ」の全貌をつまびらかにする!

「ミミズにこだわるのは、生命の原始的な形態に思えるからです」

――POVホラーへの久々の回帰となりました。手応えのほどは?

「『オカルトの森へようこそ』は『オカルト』以降やってきた私のフェイクドキュメンタリー作品の集大成的な作品です。しかも『カルト』の続編を作るのであれば入れたかった要素をふんだんに入れているので、『カルト』の続編を観たかった人はこの作品を観て補完していただきたいです」

宇野祥平のショットガン捌きにも注目!
宇野祥平のショットガン捌きにも注目![c] 2022WOWOW・KADOKAWA・ひかりTV


――『オカルト』主演の宇野祥平さんも出演していますしね!

「宇野祥平くんは僕の作品では狂気的な役ばかりでしたが、今回はものすごくカッコいいです。日本では珍しいショットガンアクションにも挑戦しています。カッコいい宇野くんのガンアクションにもご注目ください」

――連続テレビドラマとして制作するうえで、どのようなことを意識されましたか?

「テレビドラマなので毎回見せ場を作り、各話それぞれに特徴的な違いを出すことを意識しました。それぞれの回で起承転結を作りながら、全体の構成としても盛り上げ、最後は花火を打ち上げる。そんな構成になればといいなと思いました。フェイクドキュメンタリーは手持ちカメラの映像で構成されるので、本来はテレビ向きのジャンルではありません。しかし地上波ではなくWOWOWでの放送ということで、好き者に観ていただこうと。あるいはなにも知らずに、事故のように偶然出会ってもらいたい。ある意味でテレビドラマという枠組みを度外視した挑戦です。でも女性には観てほしいので、飯島寛騎くんのカッコよさにキュンキュンしてもらいたいです。しかも彼が演じる態度の悪い霊能者という設定は『カルト』や『貞子vs伽椰子』に登場する霊能者に連なる重要キャラでもあります」

飯島寛騎演じる霊能力者も、『カルト』のキャラクターを思い起こさせる
飯島寛騎演じる霊能力者も、『カルト』のキャラクターを思い起こさせる[c] 2022WOWOW・KADOKAWA・ひかりTV

――白石作品お馴染みの「霊体ミミズ」もしっかり登場しますが、ミミズにこだわるのはなぜですか?

「私はハワード・フィリップス・ラヴクラフトのクトゥルフ神話や諸星大二郎的世界観が大好きで、今回の得体の知れないバケモノたちの根源は神であり宇宙であり、すべて霊的なものに繋がっていると考えています。ではなぜミミズなのかというと、あのウネウネしたグロテスクな動きが私は怖くて大嫌いなんですが、多くの人もそうだと思います。しかしなぜあれが怖いのか考えたときに、あれは人間の胸を開いて心臓の脈動を見せつけられるような、自分の中にもある生命の原始的な姿を見せつけられている気がして怖いんじゃないかと思うんです。そういう怖さを表現したくてやっています」

――白石作品には霊体ミミズのように、共通する設定やアイテムが作品の枠組みを超えて登場しますね。

「当初は石井隆監督の作品で扱われる『名美』のように、新しい名前を考えるよりも馴染んだ役名を使った方が脚本を書く時にキャラが動きやすいのでそれをやり始めて、ホラーの世界観も同じような神話的モチーフを使うようになって、作品を超えて視聴者が楽しめるような作りになっていきました。アメコミ映画で言うところのユニバースですが、たまたま自然にそういう、マーベルとかDCにも似た感じになっていきました」

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