犬の潜在能力をも引きだす田中圭の包容力『ハウ』、草なぎ剛がまたも好演『サバカン SABAKAN』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、犬童一心が監督を務め、一人の男と一匹の犬の絆を描く感動作、、1980年代の長崎を舞台に子どものひと夏を切り取る青春映画、橋本環奈が“ゆるふわ女子&殺し屋”に扮するアクションの元気になれる3本。
スクリーンを通してもセラピー効果は抜群…『ハウ』(公開中)
あれよ、あれよと思わぬ展開を見せるワンと鳴けない保護犬ハウの冒険物語。とはいえ、この犬なら奇蹟も起きそうと思わせる存在感がすごい。登場した瞬間から目が離せない。感情が伝わってくるようなのだ。ある日突然、大好きな飼い主と離れ、ひとりぼっちになった時の不安な面持ち。それでも悲しんでいる人を放っておけず、そっと寄り添う彼の温かな眼差し。出会う人、出会う人、癒していくハウだが、スクリーンを通してもセラピー効果は抜群。しかもハウ役のベックはまさかの映画初出演。さすが『グーグーだって猫である』(08)で多彩な猫の表情をとらえた犬童一心監督である。
飼い主役の田中圭の包容力がまた、ベックの潜在能力を引きだしたに違いない。「おっさんずラブ」、「あなたの番です」と巻き込まれ型のキャラクターが合う田中だが、無邪気なハウに振り回される姿がいつになくハマり役。彼と過ごすハウの幸せそうな顔ときたら。田中を見つめるハウの姿に「犬って飼い主のことをこんなに愛情に満ちた表情で見ているんだなあ」と胸がいっぱいになる。(映画ライター・高山亜紀)
子役2人が伸び伸びと刹那の思いの強さを表現…『サバカン SABAKAN』(公開中)
1980年代の長崎を舞台に、少年2人の冒険と友情、忘れ難い“ひと夏の経験”を活写した青春映画。キン肉マン消しゴムと斉藤由貴が大好きな小学5年の久田(番家一路)は、夫婦喧嘩は絶えないものの笑いと愛情いっぱいの両親、弟の4人で暮らしている。夏休みのある日、家が貧しいことでクラスメートからバカにされている竹本(原田琥之佑)から、イルカを見るために山を越えた先の島へ行こうと誘われる。自転車はパンクし、ヤンキーに絡まれ、溺れかけながらも、2人はついに島に渡る。その日から、2人は夏休みをいつも一緒に過ごすようになるが、突然、悲しい出来事が起こり――。
売れない作家となった久田が、新たな小説に取り組むために当時を回想する形で物語が紐解かれていく。大人の久田役を、草なぎ剛がまたも好演。また両親役の尾野真千子、竹原ピストルという味ある芸達者俳優の間で、子役2人が伸び伸びと刹那の思いの強さを表現し、観る者を釘付けにする。誰もが子ども時代を振り返り、懐かしさと甘酸っぱいせつなさで、胸が一杯に。監督は、テレビや舞台の脚本、演出を手掛けてきた金沢知樹。初監督作にして、笑いあり、涙あり、誰もがどこかで身に覚えある、素晴らしいバランス感覚の愛しい佳作に仕上げた。(映画ライター・折田千鶴子)
橋本環奈が炸裂させる多彩なアクションの数々…『バイオレンスアクション』(公開中)
橋本環奈が昼はゆるふわの専門学校の学生で、夜は凄腕の殺し屋という最強ヒロイン、菊野ケイを演じた新感覚アクション・エンターテインメント。ケイは巨大ヤクザ組織の組長(佐藤二朗)からある人物の殺しを依頼されるが、ターゲットのヤクザの会計士は、なんと彼女がほのかに想いを寄せ始めていた青年テラノ(杉野遥亮)だった!
そんな思いがけない展開にも心揺さぶられる本作だが、最大の見どころは橋本環奈が炸裂させる多彩なアクションの数々だ。なにしろ、アクション監督は「銀魂」「今日から俺は!!」両シリーズでも橋本と組み、彼女の身体能力の高さとセンスのよさを熟知した田渕景也。しかも本作ではキャストを3次元デジタルデータ化し、縦横無尽のカメラワークを可能にしたボリュメントキャプチャ技術を導入しているから視覚的にも楽しいド派手なアクションが連続!くっきー!演じる大男をハイキックで蹴り倒す冒頭のアクションからラブホテルでの銃撃戦、怒涛のクライマックスまで、橋本環奈が放つアクロバティックなアクションがとにかくキレッキレで気持ちいい。
鈴鹿央士、森崎ウィン、馬場ふみかから、城田優、高橋克典、岡村隆史まで豪華&個性派キャスト陣が濃すぎるキャラを快演。スリルと恐怖だけでなく、ユル~い笑いを提供しているのもたまらない。「おっさんずラブ」、「極道主夫」シリーズで知られる、エンタメ・ムービーの奇才、瑠東東一郎監督の新境地だ。(映画ライター・イソガイマサト)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼
※草なぎ剛の「なぎ」は弓へんに前の旧字体、その下に刀が正式表記