予想外のサプライズ『NOPE/ノープ』、竹内涼真×横浜流星の絆に前のめり『アキラとあきら』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、『ゲット・アウト』(17)、『アス』(19)のジョーダン・ピールによるホラー、池井戸潤の人気小説を三木孝浩が映画化したドラマ、阿部寛が音楽隊に異動となった元鬼刑事に扮するドラマの、ハラハラする3本。
ぜひとも特大サイズのスクリーンで満喫してほしい…『NOPE/ノープ』(公開中)
長編デビュー作『ゲット・アウト』で人種差別を、『アス』で社会格差という問題を、あっと驚くホラー映画に転化させたジョーダン・ピール監督の最新作。その気になるテーマは、ずばり“UFO”だ。
アメリカ西部で牧場を営む若い黒人の兄妹が、上空に出現する謎の飛行物体の撮影に挑むという物語。SFミステリー好きならば好奇心をそそられずにいられない内容に加え、とてつもなく広大な荒野と空を舞台にした本作は、過去のピール作品とは比較にならないほどスケールがでかい。『TENET テネット』(20)のホイテ・ヴァン・ホイテマが撮影監督を務め、人が宙に吸い上げられる超常現象などのスペクタクルを映像化。もちろんUFOの正体にも、予測不能のサプライズが用意されている。かつて観たことのない“大空から迫りくる恐怖”を、ぜひとも特大サイズのスクリーンで満喫してほしい。(映画ライター・高橋諭治)
社会派映画も撮れることを実証した三木監督の新境地…『アキラとあきら』(公開中)
「半沢直樹」シリーズや『空飛ぶタイヤ』(18)の原作者として知られる人気作家、池井戸潤の同名小説を、竹内涼真と横浜流星のW主演で映画化。同じ名前なのに、性格も育ちも全く異なる瑛(竹内)と彬(横浜)が日本有数のメガバンクに同期入社する。情熱的な瑛と常に冷静に仕事をこなす彬は常に反目し合い、違う道を歩んでいたが、ひょんなことから2人は手を組み、彬の親族が骨肉の争いを繰り広げる大企業の倒産の危機に立ち向かうことになる…。
池井戸作品の魅力、普通ならどうすることもできない絶望的な危機を思いがけない方法で逆転させるスカッとする展開と、それを可能にする男たちの熱いドラマだ。それを、竹内と横浜の初めての化学反応で視覚化。2人の人生と想いが、どこでなにをきっかけに交錯するのか?強い絆で結ばれた彼らがどんな方法で沈没しそうな大企業を救うのか?さらに、江口洋介が演じる瑛の堅物の上司や、ユースケ・サンタマリアと児嶋一哉が扮した自分たちのことしか考えていない彬の胡散臭い兄たちに、2人はどう立ち向かうのか?
見どころ満載で、気づいたら前のめりに。彬の弟を演じた高橋海人を始めとする適材適所のキャスティングも楽しい。社会派映画も撮れることを実証した、三木孝浩監督(『ソラニン』(10)、『今夜、世界からこの恋が消えても』(公開中))の新境地だ。(映画ライター・イソガイマサト)
人生の岐路に立った男の再生の物語を描きだす…『異動辞令は音楽隊!』(公開中)
『ミッドナイトスワン』(20)の内田英治監督によるメガホンで、阿部寛が犯罪捜査一筋30年の鬼刑事に扮したヒューマンドラマ。コンプライアンス完全無視で警察組織の和を乱してばかりいる成瀬(阿部)は、まさかの警察音楽隊への異動を命じられてしまう。
刑事としての居場所を失った成瀬はドン底気分を味わうが、音楽隊の演奏を楽しみにしてくれるファンの存在や、隊の仲間とのセッションを通じて音楽の面白さに目覚めていく。音楽映画にして刑事ものでもある本作では、音楽、犯罪、ヒューマンドラマが複雑に絡み合いながら人生の岐路に立った男の再生の物語を描きだす。ドラムの腕前が上がると同時に人間的にも大きくなっていく成瀬を、阿部が無骨かつひたむきに体現。また、刑事課の後輩である坂本を演じた磯村勇斗の、成瀬に対する複雑な想いがにじむ“まなざしの演技”も絶品だ。
今回ドラム初チャレンジの阿部含め、音楽隊メンバーに扮した清野菜名や高杉真宙による吹替え一切ナシの楽器演奏と共に、光石研、倍賞美津子、渋川清彦ら個性派も参加した豪華俳優陣によるアンサンブルを堪能して欲しい。
(ライター・足立美由紀)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼
※高橋海人の「高」は「はしご高」が正式表記