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挑戦を止めない横浜流星。「T.」誌面未掲載写真と共にひも解く、現在の心境と成長

インタビュー

挑戦を止めない横浜流星。「T.」誌面未掲載写真と共にひも解く、現在の心境と成長

「万人受けするものよりも1人の人生に衝撃を与えたり人生を変えたりする作品に出合いたい」

本作では外見から作るアプローチを追求した横浜。実は、その“アシスト”になったのが『流浪の月』だったという。李相日監督による同作で横浜が演じたのは、ぱっと見は快活な好青年だが心に闇を抱え、恋人(広瀬すず)を支配下に置こうとする危ういキャラクター。こちらは完全に内面を掘り下げていく役どころだが、同時期に対極にある人物に挑んだことで、うまくバランスをとることができたのだとか。「実は『流浪の月』と『アキラとあきら』を縫いながら撮影していたんです。もちろん一つの作品に集中するのが一番いいと思いますが、この2作は表現としてのアプローチがまったく逆だったし、作品としてのジャンルも重ならなくて、役柄もまるで別人。だからうまく切り替えることはできました」。

李相日監督作『流浪の月』(公開中)では、恋人へゆがんだ愛情をぶつけてしまう危うい役柄を演じた横浜
李相日監督作『流浪の月』(公開中)では、恋人へゆがんだ愛情をぶつけてしまう危うい役柄を演じた横浜[c]2022「流浪の月」製作委員会

普段は愛聴する音楽バンド、amazarashiの楽曲などを本番前に聴くことで集中力を高め、役の心情に深くダイブする横浜。『アキラとあきら』×『流浪の月』の奇妙な巡り会わせは、そのスタイルに変化が訪れるほどだったそうで…。「シーンに入る前に音楽を聴いて気持ちを高ぶらせたり、あるいは落としたり。普段、芝居の感情的な部分を手助けしてくれる存在として音楽はなくてはならないものですが、今回は『流浪の月』でめちゃくちゃ落ちていたから、意外に必要がなかったですね(笑)」。

作品ひとつひとつが経験となり、己の血肉に変換されていく――。出演作を縦軸で見ることで、ますます表現の質量が増していく横浜流星の“分厚さ”への納得が深まってゆくことだろう。では本人は、直近の歩みをどう受け止めているのだろうか?

【写真を見る】シアターカルチャーマガジンT.[ティー]、横浜流星の誌面未掲載カット
【写真を見る】シアターカルチャーマガジンT.[ティー]、横浜流星の誌面未掲載カット撮影/HIRO KIMURA(W)

「自分のなかでも25歳になって、いつまでもこのままではいられないと思っていました。正直、まだ主演は早いという気持ちはあるんです。先輩方と共演してとにかく学びたいという想いが強い。そのタイミングで『DCU』で阿部(寛)さんとご一緒できて得るものも多かったし、『流浪の月』が公開して、初めてたくさんの方から『観たよ』と言っていただけたんです。友達だけじゃなくて、一緒に仕事をしている方々からも言ってもらえたのは初めてで。李相日監督の作品に参加するのはすごく幸せな時間でしたし、一つの分岐点ではないですが、このままじゃいけないと思っていたなかできっかけをくれた作品です」。

ちなみに、『流浪の月』では愛してやまない『バーニング 劇場版』(18)の撮影監督ホン・ギョンピョとの“仕事”も実現。「『俺はいま幸せな時間を過ごしているんだ』と思いながら…というか正直、撮影中は幸せを味わう余裕はなくて(笑)、終わってからかみしめていました」と顔をほころばせる。

何度も観てしまうという『バーニング 劇場版』を筆頭に、『ギルバート・グレイプ』(93)や『ヤクザと家族 The Family』(21)などを好きな作品に挙げる横浜。多忙のなかでも貪欲にインプットを行おうとする姿勢が見て取れるが、ここにも俳優活動のなかで出会った“友”のアシストがあった。「藤井(道人)監督が映画をたくさんオススメしてくれるのですが、いまはそれが溜まっている状態です。藤井監督との最新タッグ作『ヴィレッジ』の撮影がずっと京都だったので、撮影が終わって少し休んで観賞リストを消化しようと思っているのですが、まだ手を付けられていなくて。ただ、『ヴィレッジ』の参考に観た『SKIN/スキン』はおもしろかったです」。

短編版が第91回アカデミー賞で短編映画賞を受賞したことで、長編映画化された『SKIN/スキン』(19)
短編版が第91回アカデミー賞で短編映画賞を受賞したことで、長編映画化された『SKIN/スキン』(19)[c]Everett Collection/AFLO

『SKIN/スキン』(19)は、第91回アカデミー賞で短編映画賞に輝いた短編版を基盤に、長編映画化した作品。実話をベースに、人種差別主義者の変化を映し出した。日本でも人気を博す映画会社A24が共同配給を手掛けたことでも知られている。『ヴィレッジ』は、『新聞記者』『ヤクザと家族 The Family』を手掛けたスターサンズによる社会派サスペンス。とある村を舞台に、ゴミ処理施設で働く青年(横浜)の受難を描く。

インプット、アウトプット含め、オリジナリティ際立つ作品のチョイスが目立つ横浜。「これからはもっと偏ることなくいろいろなジャンルに挑戦していきたいという気持ちが、より強くなっています。バランスよく、何事にも挑戦していきたいと思っています」と語る姿が、なんとも頼もしい。「この仕事自体が挑戦の連続だと思うし、エンタテインメントってすてきだと思いますが、やっぱり万人受けするものよりも、1人の人生に衝撃を与えたり人生を変えたり、そういう作品に出会いたい。まだ自分のなかではそこまで明確なビジョンは見えていませんが、ある人が『好きな作品はなに?』と聞かれた時に自分が出演した作品を挙げてもらえるような、心に残る役者になっていたいなと思います」。

『アキラとあきら』は8月26日(金)公開
『アキラとあきら』は8月26日(金)公開[c]2022「アキラとあきら」製作委員会


来たる9月16日には26歳の誕生日を迎え、10月21日には水墨画を題材にした主演映画『線は、僕を描く』の公開が控える。常々「ファンを驚かせ続けたい」と語っている横浜流星は、この先も我々の予想を超えた景色を見せてくれることだろう。

取材・文/SYO

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