例えるなら不良少年たちの“人間交差点”！キャラ同士の関係性でひも解く「HiGH＆LOW THE WORST」の魅力とは？

ファンの度肝を抜く！“無から生まれた関係性”が続々と登場

ファン(※筆者個人の観測範囲の話です)の間では、「映像でブン殴られる」「脳を焼かれる」など、熱狂的な感想を持たれることが多い「HiGH&LOW」シリーズ。「HiGH&LOW THE WORST」も予想を超えた不良たちのアクション＆バトルは見どころの一つ。今回も6校34人(高校に在籍してない人もいるが)のキャラクターたちが全身全霊で119分一本勝負を繰り広げていくのだ(毎回思うけど、よくこれ整理つくよな。時々ついてないけど…)。

そして、『HiGH＆LOW THE WORST X』の「X」には人間関係が“クロス”するという意味が込められているとのことで、キャラクター同士の関係性も見逃せない。全員交通ルールを知らないので常に衝突事故が起きている、不良少年たちの“人間交差点”を我々は目撃することになるのだ。

まず、先述した天下井は、本当にえげつない金の使い方と武器の使い方をしている絵に描いたようなドクズ不良ボンボン(三山凌輝さんにはこの難役をよく演じたと拍手喝采を送りたい)、と彼の横に立つ須嵜による元幼なじみで現在は主従関係という構図。この関係性を嫌いな人がいるのか(いや、いるかもしれないが…)。なお、本作ではこの2人以外の因縁はあまり多くは語られておらず、例えば、江罵羅商業高校の風神(陣／THE RAMPAGE from EXILE TRIBE)、雷神(今村謙斗)には、鬼邪高校の轟洋介(前田公輝)に対して並ならぬ執着を持っていることがうかがえるものの、その背景は作中で多くは触れられていない。むしろその余白が解釈や考察をはかどらせてくれるというか、彼らの「轟ィ！」の一言、そしてその“拳”に乗せられている感情のニュアンスを観客各々で読み取っていく楽しさがあるのではないだろうか。

「あれ？このキャラとこのキャラ、いつの間にそんな仲に？」とファンの度肝を抜いたのが、轟と鳳仙四天王の一人、小田島有剣(塩野瑛久)の関係。前作でそんな素振りはいっさい見せなかったのに…。そんな、ほぼ“無”から発生した関係性が多発する本作だが、今年公開された『トップガン マーヴェリック』(20)でも前作では名前しか登場していない元カノ、ペニー・ベンジャミン(ジェニファー・コネリー)がマーヴェリック(トム・クルーズ)と、「前作と今作の間に日本で公開されてない映画やドラマシリーズでもあったんですか？」くらいの自信に満ちあふれたフルスロットルなロマンス展開を見せつけていたし、『ONE PIECE FILM RED』(22)も、突然現れた“Ado”の声帯を持つルフィの幼なじみ、ウタ(声：名塚佳織)が鮮烈な印象を残していた。どちらも日本国内で興行収入100億円を突破したことでも話題。つまり、いま、世の中は“無から生まれた関係性”の時代なのかもしれない。

不良少年を演じるLDH所属アーティスト、格闘家たちの活躍も見逃せない！

また、「HiGH&LOW」といえば、LDH所属アーティストが多数登場するのもファンの楽しみの一つ。今回、鈴蘭男子校のラオウ一派の頭であるラオウ(三上ヘンリー大智)は、LDHに所属する格闘家。演技初挑戦とのことだが、その身体の説得力はさすが“本物”。そして、別作品で活躍している面々の新たな魅力を発見できるのも、このシリーズのいいところ。例えば、昨年ドラマ「美しい彼」が評判だった八木勇征(FANTASTICS from EXILE TRIBE)は、本作ではラオウ一派最強の用心棒、山口孫六として、美しい蹴りを披露。あるいは、今年の6月末まで放送されていた「明日、私は誰かのカノジョ」でホストに扮して歌舞伎町でシャンパンを煽っていた藤原樹(THE RAMPAGE from EXILE TRIBE)は、鎌坂高校の氷室零二として屋上から空き瓶投げつけて不良たちを煽っているわけで(藤原さん、「性格に問題のある美形」をやらせたら右に出る者がいないのではないでしょうか)。

…と、キャラクターの魅力を語っていくとキリがないのでこのへんで。不良少年たちの学校や派閥を越えた巨大感情の矢印が飛び交っているカルピス原液のような約120分。この秋、不良少年たちの身体アクションと感情大爆発の大運動会をスクリーンで体感してほしい(なお、筆者は公開後すでに、2回観に行っています)。

文/藤谷千明

※高橋ヒロシの「高」は、はしごだかが正式表記