『沈黙のパレード』福山雅治×柴咲コウ×北村一輝、関係性の変化も楽しむチーム「ガリレオ」の結束力
物言わぬ死体とその現場から、死に至った因果と人間関係を華麗に読み解いていく。科学の観点から難解な事件の真相に迫る物理学者、湯川学を主人公とした東野圭吾の「ガリレオ」シリーズ。湯川と、彼の大学時代からの親友で刑事の草薙俊平、その部下の内海薫のトライアングルは2007年にスタートしたドラマ「ガリレオ」で瞬く間に視聴者の心をつかみ、映画第1弾となる『容疑者xの献身』(08)は49億円もの大ヒットを記録。
そしてついに、映画第3弾となる『沈黙のパレード』(公開中)にて9年ぶりにトリオが再集結した。今回の舞台は架空の町、菊野市を舞台に、歌手デビューという輝かしい未来を目前としながら忽然と行方をくらまし、3年後、火事現場から遺体となって発見された女子学生を巡る事件に迫る。原作とドラマ、映画が相互に影響しあって、登場人物たちが年齢と共に成長しているという関係性について、湯川役の福山雅治、内海役の柴咲コウ、草薙役の北村一輝に聞いた。
「ずっと『ガリレオ』シリーズを追ってきた人にとっては、湯川先生の変化に気づけるのかな」(柴咲)
――これまでの湯川先生は、事件や死体の状況から、推測と実証のみをクールにしていく感じでした。今回は事件の真相に迫るなか、草薙が抱える複雑な感情について、一歩踏み込んでジャッジする姿勢が新鮮でした。皆さんは湯川先生のその変化はどう感じられましたか?
柴咲「『沈黙のパレード』での殺人事件は、亡くなった女子学生とその家族について、湯川先生が常連として通っていた定食屋『なみきや』の一家として知っていたという背景もある。これまでだったら湯川先生のキャラクター的に首を突っ込まなかった部分にまで動いていますよね。もちろん、これまでと同様にクールだし、理論立てての推敲が頭の中にあるんだろうけれど、事件の裏側には自分が大切に思う人の顔があり、想いがあり、彼らのために動いているのかなと思うと、初めて見る人にとってはドライに推理しているように見えても、ずっと『ガリレオ』シリーズを追ってきた人にとっては、湯川先生の変化に気づけるのかなと思います。私自身、先生の変化がわかるので、これまでずっと関わってきてよかったなと思いました」
北村「年月の積み重ねもあり、キャラクターも演じる僕たちもそれぞれ成長しているのかな。この映画単体で見ても、湯川、草薙、内海、それぞれすごく変化があったりする。またおもしろい対比で、スペシャルドラマ『ガリレオ 禁断の魔術』では映画と構図が逆になっていて、湯川を草薙が助けるような図式になっているんです。湯川には、その負い目があるわけではないですが、その経験もあった上で、『沈黙のパレード』では草薙が湯川に助けてもらうという、そういう流れがあるかな」
福山「スペシャルドラマの湯川さん、結構乱暴なんですよね」
北村「そうそう(笑)。まったくおとなしくない」
福山「むしろ暴走するんですよ」
柴咲「へええ。早く見たいな、その湯川先生」
北村「それも他人への愛というか、自分のためではなく、人への行動として。いままでなかったぐらいの湯川の暴走ですよ(笑)。本当に」
福山「湯川としては、『容疑者xの献身』の石神の件からずっと引きずっているものがある。検証の結果、あの結末が導かれたこと、自分がしたことが本当に正しかったのかと思っている。ただ、その正しさって、見る角度、受け取り方によって違う。湯川としては、あの時、あのタイミングでああいう判断をせざるを得なかったんだけど、今回は草薙という友人に対して、石神の時と同じような過ちを繰り返したくないと思っている。
湯川の行動で草薙を追い詰めることにもなるんですけど、湯川も草薙も石神の件を経て、以降も様々な経験を重ねているはずなので、いまの草薙だったら、いまの湯川だったら乗り越えられるんじゃないか、ってことを今回は追求したかったんだと思うんですね。直接はそう言ってないんですけど、湯川は湯川の乗り越え方、草薙は草薙の乗り越え方を。ギリギリのところを今回の湯川は選択しています」