「軽い気持ちで観れる映画こそ、いますごく大切」『犬も食わねどチャーリーは笑う』 香取慎吾&岸井ゆきのにインタビュー
香取慎吾が『凪待ち』(19)以来3年ぶりに主演を務め、草なぎ剛主演の『台風家族』(19)を手掛けた市井昌秀監督がオリジナル脚本でメガホンをとる、『犬も食わねどチャーリーは笑う』が現在公開中。表向きは結婚4年目の仲良し夫婦だが、裏では鈍感な夫に妻はイライラを募らせており、SNS上で妻たちが恐ろしい本音を書き連ねる“旦那デスノート”に投稿しては、日ごろの鬱憤を晴らしていた。そんなある日、夫もついに“旦那デスノート”の存在を知ってしまい…。ホームセンター勤務で筋トレが趣味の夫、裕次郎を演じる香取慎吾と、妻の日和に扮した岸井ゆきのに、本作の舞台裏やそれぞれの「映画の観方」について、語ってもらった。
「おもしろい台本は一度読めば自然と頭に入ります」(香取)
――お二人が夫婦役で初共演されると聞いて気になったのが身長差なんです。33センチ差だそうで。
香取&岸井「へ~!」
――ということは、お二人としてはあまり気にしていなかった、ということですか?
香取「そこはあんまり。というより、お芝居してる時も全然気にならなかった(笑)」
岸井「言われてみれば、たしかにそうだったかも…? というくらいの感じですかね(笑)」
――では、お互い共演する前に思っていた印象と、実際に共演してみて感じたことは?
岸井「初めてお会いした時に香取さんから『僕、(台本)覚えてこないから』と言われて、『さすが、香取慎吾さんだ!』と思ったんですよね(笑)。ものすごく正直な方で、最初から最後まで、もうずっと“いつもみんなのそばにいる慎吾ちゃん”のイメージのままでした」
――香取さんは?
香取「いろんな作品で見かけるたびに『素敵な女優さんだなあ』と思っていた矢先に、今回この作品で共演できることになってうれしかったけど、できることならもうちょっとあったかい関係性の役柄でご一緒したかった気もします(笑)。撮影の合間もちょこちょこしゃべってはいたけど、次のシーンに備えてお互いにブレーキをかけるような感じもあったから」
――裕次郎はプロテインを飲んで筋トレに励むガタイのいい男ですが、今回、撮影前の役作りで身体を作り込まれたんですか?
香取「いや、僕はなにもしてないです。現場で、監督から言われたとおりにやっただけで…。筋トレとか大嫌いなんですけど、僕の場合は役のためになにかをするっていう発想がそもそもないんです」
――ちなみに、物語の後半、裕次郎が日和の働くコールセンターに乗り込んでくるクライマックスシーンも印象的でしたが、あの場面はかなりアドリブも入っているのでしょうか?
岸井「いや、全部監督が書かれた台本どおりのセリフでした」
香取「あのシーンは、結構動きも全部細かく決まってたよね」
――直前に台本を読み返しただけで、すぐにあそこまでのテンションでセリフを発せられるものなのかなあと。
香取「だって、おもしろい映画を観終わったあとに友だちと食事に行って感想を言い合ったりすると、1回観ただけでも細かい部分まで覚えてるじゃないですか。それと同じような感覚で、僕は1回台本を読めばだいたい覚えられるんです。…ってその話を前に演出家の三谷幸喜さんにしていたら、『つまり香取くんがセリフを覚えにくい台本はおもしろくないということですね』って言われちゃったんだけど…(笑)」
――(笑)。そういうことですか?
香取「ちょっとそういう感じもあります(笑)。だって印象的な場面とか重要なセリフって、みんな覚えてますよね? 『あのオープニング超カッコよかったね!』とか『あのセリフよかったね』って、全部話せるじゃない?」
岸井「たしかに!」
香取「コールセンターのシーンも1回読んだら、あの感じが自分でイメージできたから」
岸井「そう聞くと『なるほど、そういうことか!』と想像はできるんですけど、いざそれを現場で実際にできるかと言われたら、絶対にできないんですよ。香取さんは本当にすごい!」
――全然違うアプローチの二人が、あのシーンをエモーショナルに演じているわけですね。
香取「でもそこはやっぱり相手の俳優さんの出方によっても変わってくる。自分が思っていた以上のものになったりもするし。自分が想像していたのと違うお芝居をされると、『怖いなあ』と思ったりしますよね。あ、もちろん“いい意味で”ですけどね(笑)。僕はもともとお芝居が苦手というか、『あまり好きじゃない』とか言ったりもしてるんだけど、もし本当に嫌いだったら、別に無理にやらなくてもいいわけで。でも結局なんだかんだ言いながらやっている。それこそ草なぎ(剛)とも時々話すんですけど、お互いの作品を観たりした時に、『あそこのシーンのアレ、やっててすごい気持ちよかったでしょ!』とか『あの場面、すっごい気持ち悪かった!』みたいに、実際にお芝居をやったことがある本人たちにしかわからないような感覚を共有したりすることは、結構あるんです。僕が言ってる“気持ち悪かった”っていうのも、もちろん“いい意味で”ですけどね(笑)」
――“いい意味で!”って、劇中に何度も出てくる裕次郎の口癖ですよね。
香取「さすがにもうちょっとセーブしたほうがいいのかな?っていうくらい、これまで受けた取材で『裕次郎がダメなヤツ!』という話しかしてないんだけど(笑)。この作品は監督が自分で脚本も書いているし、裕次郎のキャラクターには監督自身が投影されているから、僕が取材で『裕次郎はダメなヤツだ』て言えば言うほど、監督にダメ出ししている感じになっちゃうんですよ(笑)。実際にゆきのちゃんから見て、裕次郎って男はどうなの?」
岸井「私は、日和も裕次郎もお互い様なんじゃない?って思う部分もあるんですけど、裕次郎みたいに、なにかと『いい意味で!』って言われたら、私も間違いなく嫌ですね(笑)。でも、実際の香取さんは裕次郎とは全然違って“いい男”ですから!」