男女の友情、史実に基づくミステリー、豪華キャスト…。魅惑の要素がたっぷり詰まった『アムステルダム』を、編集部&映画ジャーナリストが語る!
アカデミー賞ほか数々の映画賞に輝いた『ザ・ファイター』(10)『世界にひとつのプレイブック』(12)『アメリカン・ハッスル』(13)などで知られるデヴィッド・O・ラッセル監督の最新作『アムステルダム』が10月28日(金)より劇場公開される。1930年代のニューヨークを舞台に、アムステルダムで出会い固い友情で結ばれた3人の男女の再会と、世界規模の陰謀に巻き込まれていく物語が描かれる。町医者に庶民派弁護士、ミステリアスな芸術家、元将軍から諜報員、含みありげな大富豪など個性あふれるキャラクターを演じるため集まったのは、クリスチャン・ベール、マーゴット・ロビー、ジョン・デヴィッド・ワシントンはじめ、アニャ・テイラー=ジョイ、ゾーイ・サルダナ、テイラー・スウィフト、ラミ・マレック、ロバート・デ・ニーロほか、ありえないくらいに豪華なキャストたち。早くも本年度アカデミー賞有力候補の呼び声も高い本作を、MOVIE WALKER PRESS編集部の下田桃子と杉原苑子、LA在住の映画ジャーナリスト、平井伊都子、映画ライターの神武団四郎がひと足先に鑑賞。印象的だったシーンや見どころについて語り合った。
第一次世界大戦に従軍したバート(ベール)は、戦地で知り合ったハロルド(ワシントン)と共に重症を負うが、従軍看護士のヴァレリー(ロビー)に命を救われる。やがて意気投合した3人はオランダのアムステルダムで共同生活を始める。すばらしいアート作品を生みだすヴァレリーがハロルドと愛し合うようになるなど、友情と自由を謳歌する日々を送るが、そんな時間は永遠に続かなかった。バートはアメリカに残した妻のもとへ戻り、ヴァレリーも姿を消してしまう。
時は流れ、1933年のニューヨーク。医師として働くバートは弁護士のハロルドに呼ばれて、ある遺体の検死を依頼される。その遺体は、軍にいたころの上官で、彼らを引き合わせた人物でもあった。上官の死に疑問を抱く2人だったが、その調査中に事件が急展開し、なんと殺人事件の容疑者として追われる身に…。濡れ衣を晴らすため、事件に関与していると思われる資産家の豪邸を訪れるバートたちは、そこで思いがけない人物と遭遇する。豪邸にはアムステルダムで消息を絶ったヴァレリーが暮らしており、彼女は資産家の妹だった。かくして、かつての友情を取り戻した3人は協力して真相を究明しようとするが、そこには世界を揺るがしかねない巨大な陰謀が渦巻いていた…。
「『ハリー・ポッター』の3人組を見ているような気持ち」
下田桃子(以下、下田)「とにかく登場人物が多いので、話を追うだけで精一杯になるかなと思っていましたが、実際に観てみると物語を貫くバート、ハロルド、ヴァレリーの3人の友情のお話が魅力的で、かなり楽しく拝見しました。男3人や女3人の友情ではなく、男女組み合わせて3人の友情なのがおもしろかったです」
平井伊都子(以下、平井)「私は9月半ばくらいに、ロサンゼルスのエルキャピタンというシアターでのプレミアで観たのですが、デヴィッド・O・ラッセル監督とクリスチャン・ベールが登壇したQ&Aもありました。最近、個人的に映画を観る前はなにも情報も入れないようにしていて、ポスタービジュアルのイメージからたくさんのスターが出ることはわかっていたものの、あまりに豪華で『こんな人も出ていたんだ』とびっくりしました」
杉原苑子(以下、杉原)「私も最初は難しいお話かなという印象でしたが、観たら意外とわかりやすかったというのが鑑賞後すぐの感想です。歴史が絡んできますが予備知識が必要ということもなく、観終わったあとに気になったところを調べるくらいがいいかも。誰もが軽い気持ちで楽しめる映画だと思いました。(主人公3人が)『ハリー・ポッター』を観ている時の幸福感と同じだなと思いました」
平井「たしかに。3人の友情はハリーとロン、ハーマイオニーと似た空気感がありましたね」
下田「だいたいヒロインを取り合う展開になるんですけど、そこはデヴィッド・O・ラッセル監督。みんな等しく群像劇にしているところがいいですよね」
神武団四郎(以下、神武)「主人公3人のキャラを中心に、登場人物それぞれのキャラが立っているところがデヴィッド・O・ラッセルらしいなというのが第一印象でした。ストーリーは史実を基にしていますが、ほとんどのキャラは実在する誰かというより、第一次世界大戦や世界恐慌といった混沌とした出来事を経験した当時の人々を象徴するような設定になっているみたいですね」
「女優たちのキャラクターがそれぞれ魅力的で美しい!」
杉原「女優のみなさんが一人一人異なったキャラクターじゃないですか。みんなクセ強めな感じですけど、それぞれが魅力的で美しかったのもすごく印象に残っています」
下田「とにかくマーゴット・ロビーが、よすぎるくらいいい役ですよね。セリフもすてきだし、周囲から浮いてしまうちょっとはみ出した部分を含めて共感度が高い。パーフェクトな女性というより、美しいものを大切にしようと苦心している感じもよかったです」
平井「映画の企画はクリスチャン・ベールとデヴィッド・O・ラッセルの友情から始まったそうなのですが、次に参加したのがマーゴット・ロビーだったそうです。脚本を書く段階で、彼女とラッセル監督は友情やアートに命を懸ける女性についてなど、長い時間をかけて組み立てていったのだと語っていました。ちなみにキャスト陣は、その日にどのシーンを撮るのか具体的なことは知らされてなかったそうです。役者にとって恐ろしいことではありますが、ロビーはアーティストとして、俳優として、見たことのない自分を見ることができるので解放感を感じたそうです」
神武「ということは脚本も当て書きというか、役者と一緒にキャラクターを作っていったんですね」
平井「そうですね。プレミアにはラミ・マレックやマイケル・シャノン、マイク・マイヤーズなどそうそうたる顔ぶれが参加していましたが、話を聞くとみんな、監督とのカンバセーションから役作りや脚本作りが始まったと言っていました。ちなみに、私はテイラー・スウィフトがすごくよかったです。佇まいも美しかったし、もしかしたら今後どんどん映画に出るのかなって気がします」
下田「ゾーイ・サルダナもとても美しくて、あの美も代え難いなって。身に着けているニットのカーディガンもよかった」
杉原「清らかで凛とした正義感がすてきでしたよね。アニャ(・テイラー=ジョイ)ちゃんも、美しさと相まって嫌な役を絶妙に演じていたし、クリスチャン・ベールの妻役のアンドレア・ライズボローもよかった。彼女たちを見ているだけで楽しめました」