清水尋也&モリ・マサ監督『カメの甲羅はあばら骨』でよみがえる高校時代とハマったアニメ遍歴を語る!
「現場での気づきでプラスされたものがとても多い作品」(モリ)
――一切イメージが浮かばなかったなかで、どのように役作りをしたのでしょうか?
清水「カメ田は本音をあばら骨に隠す、という普通の人間ではできないことをします。行動そのものは僕たちがしないことだけど、カメ田を含めたキャラクターたちの行動原理は、普通の人間の生活で感じ得る感情です。自分も同じような経験をしたと共感できる部分も多く、人間味を感じられたので役作り自体は普段とあまり変わりませんでした」
――モリ監督はカメ田の演じ方について、清水さんにどのようなリクエストをしたのでしょうか?
モリ「観る人が動物人間を身近に感じられるよう、自然でフラットなお芝居をリクエストしました。カメ田は影のあるキャラクターなので、暗めな雰囲気を意識していただきました」
清水「シーンごとにセリフや言い回しを削ったり足したり、わりと細かく調整しましたよね?」
モリ「いろいろやっていただきました」
清水「監督がちょこちょこセリフを足してくるのがおもしろくて。というのも、僕がしゃべっている時にすごく真剣な表情でなにかを考えているんです。しばらくすると『わかりました!』とひらめいたという顔で付け足すセリフを教えてくれるのですが、それがまあ、くだらない(笑)」
モリ「アハハハ」
清水「例えばカメ田の感情が昂って走り出すシーン。途中、走っていたカメ田が一回立ち止まった際に『また、爆速を出しちまったぜ』というセリフが付け足されました。でも、カメ田はめちゃくちゃ足が遅いんです。なのに、決め台詞のようにこれを言うわけです(笑)。それがおかしくて…」
モリ「台本にはなかったけれど、どうしても入れたくなって(笑)」
清水「監督のユーモアは僕に刺さるユーモアだったので、とても楽しい時間でした。考え込む姿を見ると『なにか来るな』っておもしろくなっていましたね」
モリ「録っていくなかで欲しくなる要素もあるし、清水さんの演技からアイデアが浮かぶこともありました。現場での気づきでプラスされたものがとても多い作品です」
――動くカメ田を観たときの感想を教えてください!
清水「アフレコの時はまだ、映像は一部しか出来上がっていなかったのですが、もう十分におもしろくて。完成版はどんなにおもしろいんだろうって。画面上のどこを観ても変なヤツしかいない、そんな映像を想像するだけですごく楽しかったです(笑)」
モリ「僕の想定通り、清水さんのカメ田はガッツリハマっていて大満足です」
清水「よかった!すごくうれしいです」
モリ「カメ田の要素を一番に感じるのは声質。そこに無邪気な感じも自然に出せる声の幅は本当にハマっていました」
――本作が声優初挑戦となったカエル川エル隆役の磯村勇斗さんとのアフレコはいかがでしたか?
清水「『東京リベンジャーズ』で少し共演させていただき、ずっと磯村さんのお芝居が好きだったので『いつかガッツリご一緒させてもらえるよう、頑張ります』というお話をしていました。念願が叶っての共演は本当に充実した時間でした。掛け合いのアドリブが自然にできたのも磯村さんとだったから。芝居のトーンもすごく心地よかったです」
モリ「カエル川は、舌ったらずでちょっと抜いた表現をとリクエストしました。ひょうきんな上にかなり喋るキャラクターなので、観る人が胸焼けしないようにと思っていて。磯村さんが見事なバランスで完璧に表現してくださり、本当にありがたかったです。カメ田とカエル川の同級生のような仲間感は清水さんと磯村さんからも感じました」
――声優初挑戦にして主人公を演じた『映画大好きポンポさん』に続く主演作。前作からの変化や違いを感じましたか?
清水「前回はポンポさんの映画という意識があって。ポンポさん役の小原好美さんに技術面でも精神面でもサポートしていただき、初めての声優のお仕事でも気負わずに演じられました。今回のプレッシャーは前作よりも大きかったです。ただ、声の演技に対する緊張感はだいぶ減った状態で挑めました。今回はフラットな演技という前提もあり、いわゆるアニメの芝居ではなかったのも気負わずに演じられた理由です」
――自分の声をどのように感じていますか?
清水「ありがたいことに声を褒めていただくことが多くて。そう言っていただけるなら、自分の大きな武器と思ってもいいのかなって。声を褒めていただくこともうれしいですし、単純にアニメが大好きでいつか声優の仕事をやってみたいと思っていたので、またその機会をいただけて僕としては嬉しい限りです」