俳優生活40周年のトニー・レオン、釜山で語ったMCU参加の意義と、“キャリア新章”の展望「企画さえあれば、韓国でも日本でも台湾でも」
「最近観た映画に感化され、連続殺人鬼の役に興味を持っています」
『シャンチー /テン・リングスの伝説』では、いわゆる“ヴィラン”を演じている。40年のキャリアでもヴィラン役は挑戦だったそうだが、それ以上に演じてみたい役柄があるという。「『シャンチー』の父親役をオファーされた時、最悪のヴィランを想定していましたが、脚本を読むとそこまでではありませんでした。どんな役者も、あらゆる種類の役柄を演じてみたいと思うものでしょう。私はいままでたくさんのおもしろい役を演じてきましたが、悪役を演じることは多くありません。ヴィラン以外では、複雑な背景を持つ役を演じ、観客の皆さんが様々な考察を繰り広げてくださるような役を演じてみたいですね。個人的には、最近観た映画に感化され、連続殺人鬼の役に興味を持っています。『Theory of Ambitions(英題)』のフィリップ・ユン監督に、『連続殺人鬼を演じてみたい』と話したところ、脚本を検討してくださるということでした」。
ハリウッド進出は“運命”のようなものだったと認めるが、「企画さえあれば、韓国でも日本でも台湾でも、どこへでも行って演じたいと思っています」と述べ、『シャンチー』の出演によって新しいステージに入ったと語っている。「『シャンチー』は、準備段階からかなり秘密裏に進められていました。デスティン・ダニエル・クレットン監督から直接電話をもらい、彼の熱意にほだされて出演を決めました。役者としていつも思うのは、できるだけたくさんのお客さんに映画を観てもらいたいということです。もしもハリウッド映画に出演したら、世界中のたくさんの人々に演技を観てもらえるチャンスになると思いました。10年前の自分だったら、父親役を演じられるとは想像もしませんでしたが、このチャンスで自分の演技を研磨できるとも考えました。もしも自分の俳優人生を2つのステージに分けるとしたら、最初の半分は習得期で、次の半分は習得した演技を楽しめる時期だと思います。いまは、以前だったら演じられなかったような多様な役を演じられるようになり、もっと様々な役柄を演じてみたいと興奮しています」。
「(韓国ドラマにも)言語の壁が取り払われたらぜひ出演したい」
また、最近何度も日本での目撃情報が伝えられていることへの質問には、「私はスノーボードをやっているので、北海道に長期滞在しています。雪のなかにいると時に街が恋しくなるので、東京にも出没します。シティライフも好きなので。特別にプロジェクトが動いているというわけではありません」と、噂を否定した。日本での撮影ではないが、次回作はアメリカ製作のドラマシリーズを検討しているという。「2000年代初頭に企画されたけれど、実現しなかったプロジェクトに似ているアクションものです。昨年脚本を受け取り、とても気に入りました」と、スクリーン・インターナショナル誌の取材に答えている。現在は演技の仕事を休んでいるため、2024年以降にカナダで撮影予定の英語劇で主役を演じることになるようだ。釜山国際映画祭らしく、韓国ドラマへの出演可否については「言語の壁が取り払われたらぜひ出演したい」と答えていたが、共演したい役者にはソン・ガンホとチョン・ドヨンの名前を挙げていた。本人もキャリアの新章に入ったと言っているとおり、これからは新しい場所や役柄を演じるトニー・レオンの姿を目にする機会が増えることだろう。
取材・文/平井伊都子