「ハコヅメ」原作者は、戸田恵梨香&永野芽郁共演『母性』をどう見たのか?「理性的な母親でいたいと強く思いました」

インタビュー

「ハコヅメ」原作者は、戸田恵梨香&永野芽郁共演『母性』をどう見たのか?「理性的な母親でいたいと強く思いました」

人気作家、湊かなえの同名小説を、戸田恵梨香永野芽郁を母娘役に配し、『余命1か月の花嫁』(09)、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(17)、『ノイズ』(22)などの廣木隆一が映画化した『母性』(11月23日公開)。女子高生が遺体で発見された。事故か自殺か、それとも…。悲劇に至るまでの過去を、真逆ともいえる母と娘それぞれの視点から映しだしていく衝撃のエンタテインメントだ。戸田、永野のコンビといえば、警察官の“先輩&後輩”役を好演したドラマ「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」の記憶も新しい。そこで、ドラマの原作コミック「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」の作者、泰三子へのインタビューを実施。「ハコヅメ」とは打って変わった役柄の戸田、永野が見せた熱演の感想から、世間が絶対的なものとして崇めがちな“母性”とはいったいなにか?といった難題まで。娘として、また母親として、泰が本作を通して感じたことを語ってもらった。

「永野さんは、本当に人の心を引きずり込む天才です」

「ハコヅメ」では、町山交番勤務の新人巡査、河合を永野が、彼女を厳しくも温かく指導する優秀な巡査部長の藤を戸田が演じていた。コミカルな掛け合いや仲睦まじい様子で視聴者を和ませた同作から一変、『母性』では娘を愛せない母親のルミ子(戸田)と、母に愛されたい娘の清佳(永野)として登場する。そんな戸田と永野の変わりぶりに、泰も驚いたと振り返る。

ドラマ化も果たした人気コミック「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」
ドラマ化も果たした人気コミック「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」[c]泰三子/講談社

「戸田さんが『ハコヅメ』で演じた藤は、頼りになるし、ずっと見ていたい気にさせる人でした。本作のルミ子は、観れば観るほどこっちが情緒不安定になりそうで…(笑)。ハラハラして目が離せない女性でした。まるで生い立ちが違う人物というか、まったく人格が変わっていましたね。ルミ子の目がどこも見ていないような時があって、そんな時はなにを考えているんだろう?と思って観ていました。対して永野さんは、本当に人の心を引きずり込む天才ですよね。無理矢理にでも作品内に感情が引き込まれて、自己投影させられました。主役を任される俳優さんって、そういう力がないといけないんでしょうね。あんなにかわいい女子高生に自分を重ねるところなんてまったくないのに、永野さんの力量で、清佳目線で感情移入していました。観ながら何度も清佳を抱きしめたくなりました」。

娘を愛せない母親のルミ子と、母に愛されたい娘の清佳
娘を愛せない母親のルミ子と、母に愛されたい娘の清佳[c]2022映画「母性」製作委員会

「子どもの見ているこの世界と自分が見ている世界は、同じだけど違うように映っている」

本作は母と娘、それぞれの回想で過去がひも解かれていくのだが、同じ出来事でも2人の意見が食い違っているところが興味深い。このような演出について、「私は少し前まで警察官をしていたのですが、同じことを供述しているのに、当人たちによって言うことがまるで違うことを何度も経験してきました」と自身の経験を交えて説明する。

「真実は1つじゃない、難しいな、と思いながら観ていました。警察官だった当時も、同じ行動について話していても本人たち、あるいは立場によって意味合いが違ってしまうことに、第三者としてすごくジレンマを感じていたんです。おそらく、どちらも嘘をついているわけではないんですよね。映画では、その辺りもすごく腑に落ちる描き方をしていたと思います」。


ルミ子に“母性”は宿っていないのだろうか?
ルミ子に“母性”は宿っていないのだろうか?[c]2022映画「母性」製作委員会

そんな泰の目には、ルミ子と清佳の関係性はどのように映ったのだろうか?「ルミ子が証言する時の家の様子や洋服、食卓の感じと、娘の清佳が証言するそれらの感じが全然違うことにハッとさせられました。娘から見るとたいして家も綺麗でないし、別に美男美女の両親でもなく、質素な食卓を囲んでいた記憶なんです。でも、母からすると、すてきなお家に、キラキラ輝く自分が生活していたふうに記憶している。母娘の感覚や記憶のなかの光景の違い、そのなかの“光”が違うという演出が、一人の親としてはすごく悲しかったです。子どもの見ているこの世界と自分が見ている世界は、同じだけど違うように映っているぞ、気をつけないといけないな、と諭されました」。

いじめを行う生徒に注意するなど、不道徳なことを見過ごせない清佳
いじめを行う生徒に注意するなど、不道徳なことを見過ごせない清佳[c]2022映画「母性」製作委員会
■泰三子
某県警に10年間勤務後、2017年に漫画家に転身。警察官時代の経験を活かし執筆した短編「交番女子」が掲載された「モーニング」誌上で、同年11月より「ハコヅメ ~交番女子の逆襲~」の週刊連載をスタート。2021年には戸田恵梨香、永野芽郁主演で「ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜」としてドラマ化を果たし、話題に。単行本最新22巻が発売中。
・講談社「ハコヅメ ~交番女子の逆襲~」:https://morning.kodansha.co.jp/c/hakozume/


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