吉岡秀隆、16年ぶりに演じた“Dr.コトー”は「こういう時代にいてほしい。僕にとっても大事な役」高橋海人は限界突破を告白!
累計発行部数1200万部を超える山田貴敏の同名漫画を原作に、2003年と2006年に連続ドラマで2シーズンが放送された国民的ドラマの劇場版となる『Dr.コトー診療所』(12月16日公開)。10月26日に東京都内で製作報告会見が行われ、吉岡秀隆、柴咲コウ、大塚寧々、高橋海人(King & Prince)、生田絵梨花、泉谷しげる、筧利夫、小林薫、中江功監督が登壇。大きな拍手に迎えられ、チーム一同が笑顔たっぷりに本作に込めた想いを語った。
東京から僻地の離島に赴任してきた外科医“Dr.コトー”こと五島健助と、島の人々との交流を通して命の尊さを描いた本作。ドラマ放送から16年の時を経て、劇場版が公開となる。吉岡は、自身の代表作であり、代表役ともいえる“コトー先生”を16年ぶりに演じた。
司会を務めた軽部真一アナウンサーから「またやろうという気持ちは、ずっと心のなかにありましたか?」と聞かれた吉岡は、「ありません」と正直に答えて周囲も大笑い。「もう僕のなかでは」と口火を切り、「ただ監督は、Dr.コトー、五島健助の火をなかなか消してくれなくて。会うたびに『いまどうしているんだろうね』とか、『(筧演じる)和田さんは、どうしているかね』という話をしてくるので。監督のなかでは、ずっと消えてなかったんだなと。その火をまたまた僕に焚き付けてくれた」と監督の熱意に感謝していた。
長い年月が経ったこともあり、「頭も真っ白になってしまって」と照れ笑いを見せた吉岡。「随分時間が経って、もう一度戻れるのだろうかという自問自答の日々。振り返れば勝手知ったる、一緒に同じ汗と涙を流してくれた人たちが常にいてくれたので、そのなかでまたコトー先生に戻してもらえた感じがしています」と仲間と過ごすことで、自然と役柄に戻ることができたという。また不安定な時代に「こういう先生にいてほしい。こういう時代になったらこそ、そう思える」としみじみ。「僕自身にとっても、とても大事な作品、役です」と思い入れを語っていた。
柴咲は、診療所の看護師・星野彩佳、改めコトーと結婚して姓が変わった五島彩佳役として出演している。柴咲は「星野彩佳だったんですけれど、五島彩佳として戻ってまいりました」と自己紹介。軽部アナから「ご結婚、妊娠おめでとうございます!」とキャラクターが人生の節目を迎えたことを祝われるひと幕もあり、吉岡と一緒に楽しそうな笑顔を見せつつ「再放送を観ていて、自分が出ていても、もはや自分ではなくて。その島もフィクションではなくて、本当にどこかに存在していて、出てくる人たちもずっとそこにいるんだという気分で観ていた」とコメントした。今年は「ガリレオ」シリーズへの帰還もあった柴咲だが、「たまたまどっちもフジテレビで」と微笑み、「『Dr.コトー』の集大成」と胸を張っていた。
映画から、新米医師の織田判斗役として高橋が参戦した。「長く愛されている作品に出させていただけると聞いて、本当にうれしくてプレッシャーを感じていた。本気で挑もうと思って、たくさん台本も読んで、いざ現場に行った時に周りのキャストさんのすごさ、スタッフさんの熱量、僕のいたらなさに打ちのめされた」と告白。「家に帰ってすごく悔しくて『明日は』と思っていろいろと準備をして、また現場に行って打ちのめされてという日々の繰り返し。僕のなかで限界突破。100パーセントを超えて120パーセント頑張ったなといま感じています」と力強く語った。
苦労したのは「全シーン」とのこと。高橋は「求められる水準の高さ、皆さんがドライ(リハーサル)の時から熱心にディベートをされて、一個一個作り上げているところに、しがみつきながら頑張っていた」と奮闘の日々を述懐。司会から「20、30テイクと重ねたシーンもあったそうです」と話を振られると、高橋は「バレていますか」と苦笑いを見せ、「長いシーンで、織田判斗が島の医療のあり方について問うシーン。繊細なところを監督に指導していただいた」と振り返る。シリーズのレジェンド俳優たちと共演しているシーンだったそうで、「神たちに見守られている感じだった。生きた心地がしなかった」と素直な胸の内を明かして、周囲を笑わせていた。
本作の監督を務めるのは、ドラマシリーズでも演出を務めた中江功。中江監督は「20年も同じメンバーで、変なことで泉谷さんが捕まることもなく(笑)、みんな元気で全員がそろうことは奇跡。これが見どころです」と茶目っ気たっぷりににっこり。「集大成で完結編だと思います」と語り、「僕のなかでは最初で最後の映画化だと思っています。フジテレビの戦略的にまた連ドラをやるんだろうと思われるかもしれませんが、いっさいございません。これを最後に、コトー先生を一回締めようと話した。僕は今後、やる気はないです」とキッパリ。「こんなこと言っていいのかな?」と周りを気にすると、軽部アナは「監督としては集大成。ただフジテレビの場合、『海猿』という映画があって。ファイナルのあとも続いた」と期待。これには会場も大笑いだった。
取材・文/成田おり枝
※ 高橋海人の「高」ははしご高が正式表記。