『ブラックパンサー』『TENET テネット』『クリード チャンプを継ぐ男』…気鋭の作曲家、ルドウィグ・ゴランソンを知っているか?
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の最新作『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(公開中)。アフリカの架空の王国ワカンダの王にして、スーパーヒーロー集団アベンジャーズの一員である主人公の活躍を描いた『ブラックパンサー』(18)の待望の続編だ。『ブラックパンサー』は世界的な大ヒットを飛ばしたばかりか、コミックを原作とする映画には異例と呼べるほどの高評価を獲得し、2019年の第91回アカデミー賞では作品賞など7部門にノミネートされ、3部門を制した。
とりわけ注目されたのは、同作でアカデミー作曲賞を受賞したルドウィグ・ゴランソン。ポップ・ミュージックに詳しい方ならば、チャイルディッシュ・ガンビーノのヒット曲「ディス・イズ・アメリカ」の共同プロデューサーとしておなじみだろう。このナンバーが主要2部門を制した2019年の第61回グラミー賞で、ゴランソンは『ブラックパンサー』で最優秀スコア・サウンドトラック・アルバム賞を受賞。その2週間後に開催されたアカデミー賞でも、見事に同作で作曲賞を射止めて、一躍時の人となった。『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』でも、ゴランソンは引き続き音楽を担当しているが、この気鋭のコンポーザーについて、改めて復習してみよう。
盟友ライアン・クーグラーと共に世界が注目するクリエイターに
1984年にスウェーデンで生まれたゴランソンはストックホルムで音楽を学んだあと、23歳で渡米し、南カリフォルニア大学で映画やテレビの作曲を専攻。この時期の交友関係は、のちに大きな実を結ぶことになるが、それは後述する。卒業後、ゴランソンは2009年から放映されたテレビシリーズ「コミ・カレ!!」の音楽を担当。そこに出演していたのがチャイルディッシュ・ガンンビーノこと、ドナルド・グローヴァーで、ヒップホップ・アーティストとして台頭していた彼を、ゴランソンはサポートすることになる。
一方でゴランソンは映画音楽の分野でも仕事を得るようになり、ルーベン・フライシャー監督の『ピザボーイ 史上最凶のご注文』(11)でスコア作曲家として独り立ち。以後、多くのスコアを映画に提供することになるが、とりわけ彼のキャリアに大きな影響を与えたのが、南カリフォルニア大学在学時に同窓生だったライアン・クーグラーとの出会い。同校で演出を学んでいたクーグラーは低予算で製作した初監督作『フルートベール駅で』(13)の音楽をゴランソンに依頼。この映画が好評を博したことでハリウッドに招かれたクーグラーは『クリード チャンプを継ぐ男』(15)を監督し、続く『ブラックパンサー』で押しも押されぬヒットメーカーの仲間入りを果たす。そして彼の作品にスコアを提供し続けてきたゴランソンもまた、世界注視の映画音楽作曲家となったのだ。