“顔“の名演光る不条理サスペンス『ザ・メニュー』、自分は何者であるのかを問う『ある男』など週末観るならこの3本!

コラム

“顔“の名演光る不条理サスペンス『ザ・メニュー』、自分は何者であるのかを問う『ある男』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、レイフ・ファインズ&アニャ・テイラー=ジョイの共演で恐ろしい“フルコース”を描くサスペンス、平野啓一郎の同名小説を気鋭のスタッフ&キャストで映画化する驚愕&感動のミステリー、「キングスマン」シリーズのマシュー・ヴォーン製作で、家族の最期のパーティーを描くブラックコメディの、緊張感の漂う3本。

思いもよらぬ世界へ連れて行かれる一作…『ザ・メニュー』(公開中)

様々な客が訪れるレストラン。このあと彼らを襲う恐ろしい出来事とは?(『ザ・メニュー』)
様々な客が訪れるレストラン。このあと彼らを襲う恐ろしい出来事とは?(『ザ・メニュー』)[c]2022 20th Century Studios. All rights reserved.

有名シェフによる超斬新&極上美味なメニューで、予約がほとんど取れない、孤島の隠れ家レストラン。ある日、選ばれし12人の客が船で到着する。ワケありのカップルや、顔の知られた俳優、料理評論家らが客として絶品料理を堪能するが、それぞれのメニューにはシェフからのサプライズも添えられていた。やがてレストランの目論見とともに、12人の客たちは想定外の運命に見舞われることに…。

食欲をそそりまくるグルメムービーかと思いきや、つねに漂う不穏な空気、突然のショッキングな描写などで、思いもよらぬ世界へ連れて行かれる一作。自力では脱出できない密室サスペンスのムードや、立場が逆転する不条理な展開もスリルを加速する。本心が見えないシェフ役のレイフ・ファインズ、“呼ばれるはずのなかった”客のアニャ・テイラー=ジョイなど、俳優たちの“顔“の名演技、そのインパクトも絶大。そして終盤に出される、あるメニュー。映画を観終わった後、食べたくてたまらなくなるはず!(映画ライター・斉藤博昭)

今回もズシリと重いものを私たちに突きつける…『ある男』(公開中)

【写真を見る】別人として生きた男の真実に迫っていく『ある男』。妻夫木聡の新たな代表作が誕生!
【写真を見る】別人として生きた男の真実に迫っていく『ある男』。妻夫木聡の新たな代表作が誕生![c]2022「ある男」製作委員会

冒頭は安藤サクラ演じるシングルマザー、里枝と窪田正孝扮する孤独な男性、大祐が出会い、家庭を築いていく過程が描かれ、ヒューマンドラマのよう。ところが大祐が事故死した辺りから一変。疎遠だった兄が彼の遺影を見て言う、「これ、大祐じゃないです」。ここからはミステリー。やっと主演の妻夫木聡演じる弁護士、城戸が登場し、里枝の依頼で、大祐だった男性Xの身元調査を始める。彼女が愛した男性は一体、誰だったのか。なぜ、出自を偽ったのか。城戸はこれまでになくのめり込み、ただならぬ様子に彼の妻も不安を隠せない。

Xの事実が出れば出るほど、自分の知っている夫との違いに困惑する里枝。一方、城戸とその妻もこれまで知らなかったお互いの一面に愕然とする。知っているようで知らない、知りたくともむしろ知らない方がいいのかもしれない夫婦という不思議な関係性。結婚とは?家族とは?なにより自分は何者であるのか。『愚行録』(16)の石川慶監督、脚本の向井康介、主演の妻夫木聡が再びそろい、平野啓一郎のベストセラーを映画化。今回もズシリと重いものを私たちに突きつける。(映画ライター・高山亜紀)


ヒューマンコメディとしての毒気がたっぷり…『サイレント・ナイト』(公開中)

最期の日にパーティーを楽しむ人々の姿を描いた『サイレント・ナイト』
最期の日にパーティーを楽しむ人々の姿を描いた『サイレント・ナイト』[c] 2020 SN Movie Holdings Ltd

胸はずむクリスマス映画で新機軸となる快作が誕生!本作は、「キングスマン」シリーズのマシュー・ボーン製作、キーラ・ナイトレイ主演で贈るクリスマス×ディザスター・コメディだ。イギリスの田舎町に建つネル(ナイトレイ)&サイモン(マシュー・グード)夫妻の屋敷で、大学時代の友人とその伴侶たちを招いたクリスマスパーティーが開かれる。巷では激しい苦痛を伴いながら死に至らしめる猛毒ガスが地球全土を覆いつつあり、イギリス政府は国民に自殺薬“EXITピル”を支給。いよいよ明日にはガスが到達するというクリスマスイブに集った12人の、最期の晩餐が始まる。

ネルたちは一緒に“尊厳ある死”を迎える協定を結んでいるが、迫りくる“その時”に動揺が隠せない。そんな大人たちがアルコールの勢いで思わず明かしてしまった本音や学生時代の暴露話が場を凍らせる展開は、ヒューマンコメディとしての毒気がたっぷり。一方、これと対比的存在となっているのが子どもたちで、とりわけサラの息子であるアート(ローマン・グリフィン・デイヴィス)のまっとうな発言に、親として、大人としてどんな選択が正しいのか考えさせられたりもする。メガホンを取ったのは新鋭カミラ・グリフィン。アート役のローマンとは母と息子の関係で、さらに劇中の双子を演じたのはローマンの実の弟たちだという。そのためか子役たちのチームワークも抜群、さらなるカオス的ユーモアを産んでいるのもいい。(映画ライター・足立美由紀)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

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