友だち0人の陰キャがバンドで輝く「ぼっち・ざ・ろっく!」主人公の“ぼっち”的思考のわかりみが深い
ぼっちが踏み出す一歩に、胸が熱くなる瞬間も
自意識過剰で妄想力がたくましい、そんな陰キャのテンプレキャラであるぼっちだが、「結束バンド」に加わったことで、その日常はどんどん変わっていく。いつも話しかけてもらえるのを待っていただけの自分に舞い込んだバンドへの誘い。「こんな奇跡、二度と起こらない」と、恐怖を振り払ってライブ出演に挑む姿は、思わず応援したくなる。
虹夏の計らいで始めることになったライブハウスでのバイトも「風邪ひいて休むしかない」と氷水のお風呂に入るほど嫌がって(怖がって)いたのに、ライブハウスに訪れた人とのコミュニケーションやライブの空気に実際に触れることで、「自分もお客さんと一緒に楽しめるようなライブがしたい」と、小さいながらも一歩ずつ歩き出していく。
普通の人にとってはなんでもないことかもしれない。けれども、ぼっちが踏み出すその一歩は、彼女にとってとても大きく勇気のいることだ。重圧に押しつぶされながらもそんな一歩を積み重ねていくぼっちの姿には、コメディ作品として笑いながらも、どこか心が温かくなってしまう。
実はスゴい実力が集まった「結束バンド」の成長にも期待!
そんなぼっちには与えられた武器がある。実は演奏能力が非常に高いことだ。中学時代から欠かさずにギターの練習を続けてきたぼっちの実力は確かなもの。メンバーとのコミュニケーションが重要なバンド演奏では雲隠れしてしまうものの(虹夏とリョウには演奏が下手だと思われている)、時折その片鱗を見せるシーンも。ギターボーカルを務める喜多の歌唱力も高く、高校生バンドとして非常に高いポテンシャルを感じさせるのが「結束バンド」なのだ。
ぼっちが界隈で知られた「ギターヒーロー」であることは、メンバーには知られていない。人と目を合わせられないために、バンドでは本来の実力を発揮できていない。しかし、ぼっちはスゴいギタリストなのだ。そんな目線で作品を楽しめるのは、私たち視聴者の特権かもしれない。
文/藤堂真衣