2022年の韓国映画、総決算!大鐘賞映画祭のレッドカーペット&授賞式を振り返り
波乱含みの大鐘賞は変われるのか?独自の視点には今後も期待
韓国映画賞の中で最も歴史が長い大鐘賞映画祭だが、かつては疑惑の作品選考が乱発し、波乱の映画賞として批判された。今年も、開催の契約を巡り映画祭委託会社と対立するなど、早くから暗雲が立ちこめたことも事実だ。“国民が見る 世界が見ている”’というスローガンを掲げて開催され、選考の厳格さと透明性、公平性を強調した今回、新たに国民参加型の投票による審査方法を設けた。コピーが出来ないNFT投票権を保有した人は誰でも6つの賞に投票することが出来、専門家による審査団と1:1の割合で判定に使用された。多数の投票権を買うことでレッドカーペットへの招待などの特典が与えられるという点などについては、一部から「特典欲しさに投票権を買うのはいかがなものか」「金を積めばどんな作品でも賞を与えてもらえる」と揶揄された。
一方で、大作に隠れがちな作品をすくい取ろうという視点には、一定の評価を与えてもいいように思う。「大鐘が注目する視線」賞を受賞作したシン・スウォン監督『オマージュ』は、昨年の東京国際映画祭で上映された際、中年の女性映画監督の映画愛を巡る繊細な描写がシネフィルからも評価されていた。ノミネート作の『妊娠した木とトッケビ』もまた、元米軍慰安婦だった一人の女性の生涯を実験的手法で綴るユニークなドキュメンタリーで、釜山国際映画祭に始まり、日本を含む世界の独立映画祭で紹介されていた佳品だ。さらに、傑作ドラマシリーズを配信会社によって改ざんされる理不尽さと闘った「アンナ」ディレクターズ・カット版のイ・ジュヨン監督をシリーズ映画監督賞として称えてくれたことも、ファンにとっては嬉しかった。
今年のホームページには、「大鐘賞を国民の懐に返す」という文言がある。1962年から続く伝統の映画賞が真の意味で生まれ変わり、国民にとって意義深い映画祭として復権してほしい。
第58回大鐘賞映画賞 受賞結果
大鐘賞が注目する視線賞:シン・スウォン監督『オマージュ』
ドキュメンタリー賞:イ・イラ監督『モア(原題)』
編集賞:キム・ソンミン編集監督『犯罪都市 THE ROUNDUP』
衣装賞:クォン・ユジン、イム・スンヒ衣装監督『閑山:竜の出現(原題)』
照明賞イ・ソンファン照明監督『ハント』
視覚効果賞:チェ・カルスン視覚効果監督『宇宙+人(原題)』第一部
撮影賞:チュ・ソンリム撮影監督『犯罪都市 THE ROUNDUP』
ピープルズアワード男優賞:パク・チファン『犯罪都市 THE ROUNDUP』
ピープルズアワード女優賞『おそらくロマンス(原題)』
ニューウェイブ賞男優部門:オン・ソンウン『人生は美しい(原題)』、パク・ジェチャン『セマンティックエラー』
ニューウェイブ賞女優部門:パク・セワン『6/45(原題)』、『不思議な国の数学者(原題)』チョ・ユンソ
美術賞:リュ・ソンヒ、イ・ハジュン美術監督『宇宙+人(原題)』第一部
音楽賞:キム・ジュンソク音楽監督『人生は美しい(原題)』
脚本賞:パク・チャヌク、チョン・ソギョン『別れる決心』
新人監督賞:パク・イヨン監督『ブルドーザーに乗った少女』
新人男優賞:ム・ジンソン『ジャンルだけロマンス』
新人女優賞:キム・ヘユン『ブルドーザーに乗った少女』
助演男優賞:ピョン・ヨハン『閑山:竜の出現(原題)』
助演女優賞:イム・ユナ『共助2:インターナショナル(原題)』
主演男優賞:パク・ヘイル『別れる決心』
主演女優賞:ヨム・ジョンア『人生は美しい(原題)』
監督賞:ピョン・ソンヒョン監督『キングメーカー 大統領を作った男』
作品賞:パク・チャヌク監督『別れる決心』
文/荒井 南