「キャメロン監督が『攻殻機動隊』で真っ先に褒めてくれたのも水のシーンだった」『アバター』最新作を観た押井守監督が明かした秘話 - 2ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
「キャメロン監督が『攻殻機動隊』で真っ先に褒めてくれたのも水のシーンだった」『アバター』最新作を観た押井守監督が明かした秘話

インタビュー

「キャメロン監督が『攻殻機動隊』で真っ先に褒めてくれたのも水のシーンだった」『アバター』最新作を観た押井守監督が明かした秘話

「13年の歳月の多くはきっと、水の表現をいかにパーフェクトにするのかに費やしたんだと思う」

メトカイナ族の戦士が乗る海の生き物、スキムウイングにまたがるジェイク
メトカイナ族の戦士が乗る海の生き物、スキムウイングにまたがるジェイク[c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

――今回のメインとなる舞台は“海”です。キャメロン監督はおそらく1作目がちゃんとヒットして、続編に対してスタジオからゴーが出れば、次は“海”で行こうと決めていたのでは?

「間違いなくそうだろうね。“水”というのはアニメーションでも鬼門なんだよ。水の表現はとても苦労するとはいえ、その苦労に見合っただけの評価やヒットになるかというと、非常に難しい。思い出してみても、うまくいった作品って『海のトリトン』や『崖の上のポニョ』くらいじゃない?『海のトリトン』は放映始まった当初は苦戦してたからね。

私が初めて“水”に挑戦したのは『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』だった。素子が夜の海でひとり、ダイブするシーンだよ。あれだけでもすごく大変だったんだから!キャメロンが『攻殻』で真っ先に褒めてくれたのも、あのシーンだった。『あのダイビングシーンはすばらしかった』と言っていた。素子が海から上がり、髪を振って、ダイビングスーツのジッパーを降ろすシーンが『すばらしい』って」

撮影中に談笑する、ジェームズ・キャメロン監督とジェイク役のサム・ワーシントン
撮影中に談笑する、ジェームズ・キャメロン監督とジェイク役のサム・ワーシントン[c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

――さすが、ダイビング好きだけあって、褒めるところが違いますね(笑)。

「そうそう(笑)。私としても、実はとても苦労したシーンだからうれしかったんだけどさ。

アニメであれ、合成、CGであれ、水がからんだ途端、ハードルが上がる。時間も予算も、根性だって爆上がりする。だからキャメロンも、相当の覚悟でチャレンジしたんだと思うよ。前作から本作までの13年の歳月の多くはきっと、水の表現をいかにパーフェクトにするのかに費やしたんだと思う。

映画を観ると、水中だけじゃなく、水中に飛び込んだり浮上したり、あらゆる表現をしているからね。しかもキャラクターたちにとても細かい芝居をさせている。そういう演出を見ていると、水中でちゃんとパフォーマンス・キャプチャーできるようなシステムを開発したとしか思えないんだけど」

大きなタンクで水中シーンの撮影を行ったという『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』のメイキングカット
大きなタンクで水中シーンの撮影を行ったという『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』のメイキングカット[c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

――開発したようですよ。パフォーマンス・キャプチャー用のスーツを着た役者をちゃんと水に潜らせたようです。

「だろうね。ほかの監督だとホンモノの水は使わずデジタルで処理するよ、絶対。だってキャラクターはデジタルなんだし。でも、そこをデジタルでやっちゃうとキャメロンのモチベーションがなくなってしまう。そりゃ、役者に『水に潜れ!』と言っちゃうでしょ(笑)」


――そうでしょうね。

「その水の表現でいいと思ったのは、映画的な快感原則がちゃんとあったところ。普通、水のなかはテンポも落ちるし圧迫感も窒息感もある。ところが、この作品にはそういうネガティブな要素が全然なくて、ある意味では、空を飛ぶくらいの爽快さすら感じる。そこにはもちろん、キャラクターが人間じゃないという映画的な嘘があるんだけど、それでもこういう爽快感を演出しているのはすごいよ。

あと“イルカに乗った少年”のような描写ね。前作の鳥(イクラン)のような存在で、今回は大きな魚を乗り物にしている。ああいう生物のデザインワークもさすがだね」

押井守監督がジェームズ・キャメロン監督への敬愛を語った
押井守監督がジェームズ・キャメロン監督への敬愛を語った
押井守
1951年生まれ。東京都出身。『うる星やつら オンリー・ユー』(83)で劇場映画監督デビューを飾る。1995年に発表した『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』はジェームズ・キャメロンやウォシャウスキー姉妹ほか海外の監督に大きな影響を与えた。また、『紅い眼鏡』(87)、『アヴァロン』(01)、『ガルム・ウォーズ』(14)など多数の実写映画作品も手掛ける。ほか代表作に、『機動警察パトレイバー2 the Movie』(93)、『イノセンス』(04)、『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』(08)、「THE NEXT GENERATION パトレイバー」シリーズなどがある。

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