『新感染』×『シン・ゴジラ』!?高度2万8000フィートの密室と地上の両方で戦う『非常宣言』のおもしろさ
なんてことない、“いつも通りの今日”を襲う恐怖
『新感染 ファイナル・エクスプレス』や『シン・ゴジラ』だけでなく、こうしたパニックスリラーを見ると、信じていたいつも通りの生活が、なにかの拍子で崩れ去った時の怖さを改めて痛感せずにはいられない。本作の場合でいえば、誰もまさか飛行機内でバイオテロが発生するなどとは思わない。だから映画の冒頭、空港のカウンターで「この飛行機には何人乗っているのか?」と根掘り葉掘り聞いてくる男のことを職員が怪訝に思いつつも、その場から彼が消えたことで忘れてしまう。
娘連れのジェヒョクは、空港で見知らぬ男に絡まれ、さらに同じ機内に乗っていたことから不快に思うが、その後の騒ぎまでは想像しない。ハワイに胸を弾ませ飛行機に乗ったイノの妻も、まさか自分が乗った飛行機がバイオテロの標的となっているとは知り得ない。もっと言えば、空には国内外の飛行機が無数に飛んでいるが、その機体の中でもしかしたら死のウイルスが蔓延しているなんてことが起こっているのかもしれない。全編141分、そんな恐怖が頭の片隅をチラリとよぎらずにはいられない。
支え合う&疑い合う人々や、誰かのために奮闘する人にフォーカスする『非常宣言』
コロナ禍にあって、妙に現実味を感じずにはいられないバイオテロによるパニックスリラー。様々なジャンルのおもしろいポイントを押さえていながら、詰め込みすぎになっているわけでもなく、飽きることなく楽しむことができる作品になっている。そろそろ解決するか?と油断していると、また次のトラブルが発生し、その展開のバリエーションの多さは、さすが韓国映画だと感服させられるだろう。
期待せずにはいられないキャスト&スタッフ&題材ではあるが、想像していたおもしろさをさらに上回ってくる『非常宣言』を堪能してほしい。
文/前田かおり
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