ジェームズ・キャメロンが明かす今後の「アバター」構想…「お気に入りは4作目。できれば全部自分で監督したい」
「ナヴィも人間も、私たちの姿を映しだしている」
――劇中では、神秘の星パンドラを第二の地球にしようとしているにもかかわらず、その星の自然を蹂躙する人類および人間たちに嫌気が差してきます。彼らは、キャメロン監督が考える、現在の人間の姿なのでしょうか?
「SFというジャンルがおもしろいのは、自分たちが抱える現実を一歩離れて見ることができる点にあります。レンズを通し、ファンタジーという架空の世界から、現実を垣間見ることができる。
私がこの映画でやったのは、ナヴィを、私たち人間がもっている善の部分、一番いいところをもっている存在、あるいは、いにしえの時代になりたいと希望していた姿として描いたんです。そして、パンドラを蹂躙する大企業の連中は、強欲で世界を平気で破壊する人間。それこそ、いま現在、世界中で起きていること。ナヴィも人間も、私たちの姿を映しだしているんです。
おもしろいのは、観客の99,9%が人間の味方にはならず、ナヴィを応援するところ。本作を観ると、ほぼ全員がナヴィになりたいと思ってしまう。誰も侵略者にはなりたくないんですね。これはとても健全ですばらしいことです。
私は、自然は私たちの味方だと思っている。ただし、味方ならば奪うだけではダメで、ちゃんと世話をして、なにかを還元しないといけない。果たしていま、人間はそれができているのか?それが本作の大きな問いの一つになっていると思います」
――それは大きなメッセージですね。
「もちろん、出発点は冒険でした。ワクワクするもの、美しいものを観客に観てもらいたい。劇場に足を運んでもらいたい、というところから始まっています。そこから、潜在的な部分で観客に考えてほしい問題が生まれてきました。私たちと海のつながり、生命からもらうすばらしい恩恵など、本作では自然とそういう接点を持っているキャラクターが描かれていて、彼らから影響を受ける人がいるかもしれない。そうなれば、これほどすばらしいことはないと思います」
「最も重要なのは、一人の映画ファンとして、ただ純粋に楽しみたいという気持ち」
――キャメロン監督のフィルムメーカー人生で『アバター』の占める時間はとてつもなく長いです。それについては、どう考えていますか?
「『アバター』を始めた時は、なにか並外れたことをしたい、目にしたことがないような映画を作りたいという気持ちが強かった。そのために実験や試作を繰り返したから、製作時間も長くなりました。
その前作におけるミッションが大成功したことで、今度は違う側面が出てきました。この映画が、多くの人たちとのコミュニケーションを図る方法なのではないかと思うようになった。自然との関係性や、サステナビリティなどを語ることができるのだったら、それをやらない手はない。というか、ある意味、責任のような感覚が生まれたんです。
そしてもう一つは、ストーリーテラーとしての私の脳に、本作のキャラクターたちがどうなるのか?そのアイデアが生まれ始めました。どんな危機や問題に直面するのか?どうやってそれを突破するのか?観客がキャラクターたちを愛してくれたから、共に旅をしたいと思うようになったんです。それは、ストーリーテラーとして、フィルムメーカーとして、とても魅力的なこと。世界中の人たちと、彼らの冒険を共有できるなんて最高ですよね。
もちろん、戦略的な部分、ビジネス的な要素もあります。でも、やっぱり最も重要なのは、一人の映画ファンとして、ただ純粋に楽しみたいという気持ち。そして、アーティストとして、芸術的なことをしたいという気持ちだと思っています」