「気づいたら泣いてた」ソン・ガンホ×イ・ビョンホン『非常宣言』が観客の心をえぐる理由とは?
価値観を揺さぶるような極限の状況下での人間ドラマ
これらの要素に加えて、上空2万8000フィートでのバイオテロという絶望的な状況であぶり出されるのが人間の本質。旅客機の受け入れを巡る各国や市民の反応、機内での客同士の争いといった人間の残酷さ、そしてその先にある希望が浮かび上がっていく。
複雑な感情が盛り込まれた人間ドラマでもあるがゆえに、「気づいたら泣いてる自分がいました。それぐらい考えさせられる作品でした。話も二転三転して、いろんな感情が湧き出てきました」(20代・女性)、「家族愛や、人間関係について考えさせられました」(30代・女性)など、「考えさせられた」という言葉が並んでいた。特に映画のクライマックス、究極の選択を迫られた際の登場人物たちの決断には多くの観客が言及。
「生きたいと思うからこそ難しい選択だったと思うと悲しくもなりつらくもなった」(20代・女性)
「人としてのある種の理想像であると思います」(30代・女性)
「その決断が正解なのかは一生わからないと思います」(30代・男性)
「自分だったらと考えるとパニクってなにもできないと思う!」(20代・女性)
といった十人十色の反応が見られており、このことからも本作が人間の在り方、倫理観を揺さぶられるような作品であることがわかるはずだ。
説得力のある映像と名優たちの演技、そして重厚な人間ドラマが高いレベルで組み合わさり、パニックムービーならではのスリルの先に強烈な感動を生みだしている『非常宣言』。
「いまだからこそ感じてほしい映画がここにあると思いました。映画館でその想いを偶然居合わせた運命的なお客さんと一緒に共有してほしいです!」(30代・男性)
この言葉にもあるように、いまのご時世ともリンクした部分が多い本作はぜひ劇場で鑑賞してほしい。
構成・文/サンクレイオ翼