みんな違うデザインって知ってた?『ブラックナイトパレード』衣装スタッフが語る、サンタ服のこだわり
「銀魂」シリーズや「今日から俺は!!劇場版」などのヒットメーカーである福田雄一監督が、主演の吉沢亮をはじめ、橋本環奈、中川大志、渡邊圭祐ら、豪華キャスト陣を迎えて放った『ブラックナイトパレード』(公開中)。吉沢たちが演じたキャラクターの魅力が炸裂する場面写真をたっぷり紹介しつつ、かわいらしさとこだわりの詰まった衣装について、本作の衣装デザイナーであるYOU-KOに語ってもらった。
原作は「いい子のところには、欲しいプレゼントを持った赤いサンタが、悪い子のところには欲しくもないプレゼントを渡しに黒いサンタがやってくる」というサンタクロースにまつわる実在の伝承を基にした中村光の同名人気コミック。吉沢演じる主人公の日野三春は、コンビニで3年間アルバイト生活をしていたところをスカウトされ、“ブラックサンタ”としてクリスマスの世界で大活躍していく。
YOU-KOは衣装を手掛けるにあたり、大切にしている点について「一番はまず、本人がその衣装を身をまとった瞬間、その人物になれる衣装だと思えること。自信を持ってその人物(キャラクター)になれる衣装を作れるように心がけています」と語る。
さらに「原作がある場合、特にコミックのようにすでに衣装のデザインができあがっている場合は、その原作を活かしつつ、リアルな人間が着た時に、その役に見えることが重要かと」と、リアリティを踏まえた衣装作りを行ったそうだ。
『ブラックナイトパレード』では、三春や橋本演じる北条志乃、中川演じる田中皇帝(カイザー)、渡邊演じる古平鉄平がまとうブラックサンタの黒いサンタ服がインパクト大だ。
同衣装について「メインキャストが大勢いるなかでの4人であり、制服という縛りがあるなか、それぞれの個性が見えるように、小さなところでいろいろな工夫をしています。特に男性3人の制服は、シャツの襟の形にこだわりました」とのこと。
その違いについて「三春は少しカジュアル、鉄平はとても堅苦しいイメージ、皇帝はワルでヤンキーなイメージ。特に皇帝の襟は、いつでも絶妙に開いた状態の襟にしました。志乃はコートの形と、マフラーの先っちょのぼんぼりです。男性のマフラーは原作どおり先がフリンジになっています」と、ディテールへのこだわりも口にした。
また「かなり冒険させてもらいました」と語るのは、玉木宏が声を当てているクネヒトの衣装だ。“顔のない謎の男”クネヒトは、北極にあるサンタクロースハウスの社長で、三春の運命を変えた重要なキャラクターだ。
「クネヒトは顔のないキャラなので、いかに個性を持たせるかと考え、作品のなかで一番豪華で威厳のある服にしようと思いました。固まった帽子は浮遊感があって、自分自身もとても気に入っています」。
興味深いのは、三春の上司で、サンタクロースハウスの工場で働く妖精のリーダー、帽子さんの衣装だ。可愛らしい外見だが、中身はおっさんのようなキャラクターなので「制作チーム全体が当初、着ぐるみのような作りだと考えていました」と述懐。
「でも、原作を読み解くうちに、これは『洋服(衣装)だ』という結論に達しました。自由に動き、着ることのできる『帽子』にすべきだと。中の方の動きにも助けられ、まさに『帽子さん』となりました」と手応えを口にする。
キャラクターの魅力を際立たせる衣装の数々だが「衣装作りで欠かせない材料といえば、ボタンや、モチーフパーツなどがありますが、その1つ1つもすべてデザインし、製作したオリジナルです」と言うYOU-KO。役者の力量はもちろん、陰で支える衣装スタッフ陣の細やかな職人技によって、よりキャラクターが輝いているのだと、しみじみ実感させられた。
細部までいろいろなこだわりが詰まった『ブラックナイトパレード』。まだ映画を観ていない人も、すでに1回観たという人も、そういったディテールに注目して観てもらえば、また新たな発見がありそう。ぜひお正月に、本作で“笑い初め”をしていただきたい。
文/山崎伸子