「ガンニバル」原作者×柳楽優弥による独占対談!物語誕生秘話や撮影トリビアまで語り尽くす「実はあそこに監督が写ってるんです」
「僕から注文したところはほとんどなく、『むしろ変えてほしい』と伝えていました」(二宮)
――ドラマ化が決まったタイミングや、脚本チェックの段階などで二宮先生がリクエストした「ここを大事にしてほしい」という部分も、いまお話されたような「コミュニティの怖さ」でしょうか。
二宮「実は、脚本を読んで僕から注文したところはほとんどないんです。基本的にはお任せしたいと思っていて、ちょうどさっき当時のメールのやり取りを読み返していたのですが『むしろ変えてほしい』と伝えていました。やっぱり週刊連載となると毎週毎週作っていくぶん綻びもありますし、あとから見て『拙かったな』と感じる部分もある。『そういったところをどんどん補完してもらえたら。あとは楽しみに待っています』という感じでしたね。
実際に観てみたら、原作通りの展開にしてくれてありがたかったですし、セットが本当にしっかりしていて、逆に『これを基に描きたかった』と思うシーンがたくさんありました。駐在所なんて、住居と駐在所がくっついているところがなかなか見つけられなくて様々な写真を切り貼りしたものをモデルに描いているんです。最初にこのセットがあれば、作画作業がもっと楽になったのに…って(笑)。
あと印象的だったのは、第2話で大悟が“あの人”に引きずられていくシーン。ドラマだとあれを横から撮っているじゃないですか。坂道を上っていく“あの人”の奥に、それを見ている村人がいる。ああいう画はロケーションがよくないとできないので、羨ましいなあと思って観ていました。あれは実際に柳楽さんが引きずられているんですか?」
柳楽「はい。背中にワイヤーを付けて引きずられています。いま二宮先生がおっしゃったロケーションは、相当こだわっています。例えば山だけでも5つくらい回っていますし、監督の中に『このシーンはここで』という明確なビジョンがありました」
二宮「そうなんだ。カメラマンさんのこだわりも随所に感じました」
――第1話の冒頭、後藤家のシーンは長回しで撮られていましたね。
二宮「ああいうのだけでも期待感が持てますよね。あとは、後藤家の集合写真。僕も作中で描いていたのですが、自分のほうは『人数が少ない!』と思いました。家族写真みたいだなと。人数がいると迫力が出ますよね」
柳楽「実はあの写真、片山監督も写っているんです(笑)」
二宮「そうなんですね!」
――村人一人ひとりをオーディションで選んだと伺いましたが、皆さん“圧”がすごいですよね。
柳楽「本当に。皆さん情熱がすごくて『入れ歯を外しましょうか?』というおばあちゃんまでいたりして(笑)。片山監督はそう言うのが大好きだから、『よし、やりましょう!』みたいになっていました(笑)」
「原作を守りながら、新しい映像表現を見せていくという気合を感じていました」(柳楽)
――最後に、大悟の人物像についても伺えればと思います。お二方それぞれがどういう人物として構築されていったのか、教えて下さい。
二宮「最初はあんまり強くなく見えるように、普通の警官で、ちょい雑なやつぐらいの感じで作っていました。物語の前半は村人にやられがちで強さを見せず、徐々に狂気を垣間見せていき自分から仕掛けるようになる。銃口を向けられて謝るシーンなども、ムカついて本当は殺そうとしていたんじゃないかと思いながら描いていました。『俺はそういう人間じゃない』という気持ちがあるだろうなと。正義感もないわけではないけど、動きたいように動くという風に描けたと思います」
柳楽「演技面でいうと、受け身が多いんですよね。銃口を向けられたり罵声を向けられたりするシーンが多いのですが、ふつふつと苛立ってくるのが役柄なのか?それとも自分なのか?とわからなくなってくる瞬間がありました。いま二宮先生がおっしゃったように“前半は抑える”というのは片山監督にも常に言われていましたね。リハーサルの最中でも銃口を向けられていたらムカついてきちゃって(笑)、片山監督から『まだ怒らない。まだ立ち向かっちゃダメ!』と言われていました。皆さんすごくうまいから、監督からコントロールされないとどんどん怒りが湧いてきちゃって。監督ご自身もそういった説得力のある空気を絶妙に作ってくださいますし、僕もそこに引っ張られていました。監督の熱量がすごく高くて、二宮先生の原作を守りながら、新しい映像表現を見せていくという気合を感じていましたね」
取材・文/SYO