まるで「インディ・ジョーンズ」の世界!あのハリウッドスターも登場する「ウィロー」第6話をレビュー
キットとエローラの“不安定さ”が、シリーズ終盤を左右する?
それにしてもこのスケリン鉱山、敵役なのになんだか憎めない管理責任者のサリス公とその弟のファルケンの登場であったり、奥の方に隠されていた“ウィグルハイムの墓”で突然クイズ大会が始まるなど、ずいぶんと茶目っ気にあふれた場所であった。
ユーモアいっぱいに描かれるため忘れてしまいそうだが、ここは一度入ったら出られない恐ろしい鉱山。サリス公たちはウィローに対し「ネルウィンとは話したくない」とあからさまな差別を向けるし、あらゆる種族の人々が捕らえられて強制労働をさせられている。ボーマンたちと共に救出にやってきたスコーピア(アジョワ・ アボアー)は、囚人たちを解放するのだと1人で颯爽と正面突破していく。薄暗い洞窟といい、同じルーカスフィルムの『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』(84)を彷彿とさせる雰囲気だ。
そう考えると、ウィグルハイムの墓の人面石も『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』で邪教集団の儀式が行われていた祭壇に似て見えてくる。さらにはボーマンとジェイド、エローラ(エリー・バンパー)の3人が木で作られた通路を進もうとすると、踏み板が壊れてジェイドが落下寸前のピンチに陥る。これも『魔宮の伝説』の終盤、吊り橋が崩壊するくだりに通じるものがある。
終盤、ウィグルハイムの墓の奥に入り、“カイメリアの胸当て”などの財宝のなかでマッドマーティガンの剣を見つけたキット。そしてさらに奥にある“異空間”から聞こえてきたマッドマーティガンの声。声のするほうへ進もうとするキットを止めるのは、前回“正直の果実”のおかげでキットと仲直りしていたエローラだ。その後キットは、ようやく居場所がわかった父と、みんなを残してトロールに立ち向かうアラガシュに後ろ髪引かれ、またもやエローラと衝突してしまう。
心の中にある正直な気持ちを吐露しあってもなお、揺れに揺れるキットの不安定な心理状態。皆がエローラを選ぶことへのある種のコンプレックスのような感情を、彼女自身がうまく飼い慣らすことができないでいるからであろう。対してエローラもまた、強大な力を制御することができない不安定さのなかにいる。両者の人間的成長が終盤の物語のカギとなるのだろうか。
ところで一向に誰も助けに来てくれず、荒廃した遺跡のようなところに1人でポツンとしている(“捕らえられている”というイメージとは少し違うか)エリクは冒頭と終盤に再登場。なにもない、誰もいない場所をひたすら歩き、またしても同じような荒廃した建物にたどり着いた彼は、牢に入れられた女性を見つける。この女性を演じているのは「ゲーム・オブ・スローンズ」でタイエニー・サンド役を演じたロザベル・ラウレンティ・セラーズ!海ドラファン感涙のキャスティングが示すとおり、彼女もまた、ラストに向けたキーパーソンとなるにちがいない。
文/久保田 和馬