坂本龍一「Merry Christmas Mr. Lawrence」…40年を経て色あせない、神秘的な音色
2022年12月11~12日にかけて、日本を代表する音楽家の坂本龍一がピアノソロコンサート「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 2022」を30の国と地域に向けて配信した。コンサートは坂本が「日本でいちばんいいスタジオ」と語るNHK放送センターの509スタジオで演奏され、「Ichimei - small happiness~reminiscence」「Aqua」「The Last Emperor」など数々の名曲が披露された。
1月5日にはこのコンサートの舞台裏に迫った特別番組「坂本龍一 Playing the Piano in NHK & Behind the Scenes」がNHKで放送され、ステージ4のがん闘病を続ける坂本の現在の心境や音楽への想いも語られた。そのソロコンサートのクライマックスで披露されたのが坂本の代表曲ともいえる、映画『戦場のメリークリスマス』(83)のメインテーマ「Merry Christmas Mr. Lawrence」だ。曲が発表されてから今年で40年目を迎えるなか、世界中の人々に愛されてきたこの曲の、歴史と唯一無二の魅力を改めて振り返ってみたい。
YMO、ソロでも活躍していた坂本龍一が『戦メリ』で映画音楽に挑戦
「Merry Christmas Mr. Lawrence」は、彼の音楽人生のターニングポイントに生まれた。坂本、細野晴臣、高橋幸宏らによって結成された音楽グループ「イエロー・マジック・オーケストラ(通称、YMO)」は81年に「BGM」「テクノデリック」という2枚のアルバムを発表。さらに、坂本自身もソロアルバム「左うでの夢」を発表するという多産な時期を経て、82年にはRCサクセションの忌野清志郎とデュエットを組んで発表した「い・け・な・いルージュマジック」が大ヒットを記録。そこで坂本はYMOの“教授”とは違った一面を見せていた。
YMOの次に進みたい、そんな想いが当時の坂本にはあったのかもしれない。そして、82年に大島渚監督から『戦場のメリークリスマス』への出演依頼があり、坂本はその場で「音楽をやらせてくれるのであれば出演します」と返答した。その場の思いつきで言った、と坂本はのちに振り返っているが、映画青年でもあった彼にとって映画音楽はチャレンジしがいがある分野だった。