北条司「キャッツ・アイ」原作40周年を超えて明かす、最終回の名セリフ秘話&続編を描かない理由
「読み切りのつもりで描いたものが連載に。焦りました(笑)」
「キャッツ・アイ」は、「週刊少年ジャンプ」にて1981年に連載がスタート。レオタード姿で夜を駆ける美しい怪盗三姉妹という斬新な設定も読者の興味を引き、瞬く間に人気が上昇した。北条が大学を卒業した直後に、地元の福岡県で「読み切りのつもり」で描いたのが始まりだ。誕生のきっかけについて北条は、こう語る。
「大学の卒業制作に向けて飲み会をしていて『なんかおもしろいネタがないかな』という話をしていたら、“父親が刑事で、母親が泥棒の夫婦”というアイデアが浮かんで。妻は夫から情報を聞き出して、裏をかいてしまう…というストーリーはどうだろうかと。でも少年誌に書くとしたら、夫婦よりも恋人同士のほうがいいなと思い設定を変更しました。また三姉妹の設定にしたのは、大学の近くにカフェがあって、そこで3人の女の子が働いていたから(笑)。『じゃあ、三姉妹で描いてみるか』と、単純な発想が積み重なって生まれたのが『キャッツ・アイ』です」。
また、キャッツアイがレオタードで盗みをする設定にしたことについては「僕はボディスーツのつもりで描いていたんですよ!」と笑う。「そうしたら編集部が『これはレオタードだ』と言いだして、僕も驚きました(笑)。当時はジャズダンスなどが流行っていて、レオタードを着て踊る人もよくいましたから。そういう時代なので、レオタードだと捉えられたんだと思います」と時代が生んだ勘違いが、ヒロインたちのトレードマークになったのだという。
読み切りのつもりで描いたものが好評を得て、連載が決定した。北条は「焦りました。いきなり連載だと言われても、それ以降の物語が描けるような設定として考えていないですから。担当編集者からは『家は探しておくから、すぐに上京しなさい』と言われて、『ええー!?』と慌てて上京してきました」とドタバタとした連載デビューを回顧。同作は瞳と俊夫の繰り広げるラブコメでありつつ、“三姉妹が泥棒をしながら、行方不明の父親を探す”というドラマチックなテーマが根底に流れているが、北条によると「もともとは読み切りのつもりでしたから、それらはすべて後付けです」と告白する。
「最初は、三姉妹は泥棒の家系に生まれて盗みを働いている…くらいの感じで考えていました。ところが連載が始まって何週間か経ったころに、担当編集から『彼女たちはなぜ泥棒をしているんだ。少年誌らしい、熱い理由がほしい』と言われまして(笑)。『いまさらそんなことを言う?』と思いながらも、なんとかアイデアを捻りだして、“画家だった父親の絵を取り返すために、盗みをしている”という設定にたどり着きました。でも最初のころのキャッツアイはダイヤも盗んじゃっているし、どうしよう…と悩んだりもしましたが、そうやってすべて後付けで描き進めて。僕は連載も初めてで、それまでストーリーもろくに考えたことがない。すべてが素人なわけです。なにが正解なのか、なにが悪いのかもわからぬまま、てんてこ舞い。とにかく毎回必死でした」と自身のがむしゃらが詰まっているのが、同作なのだと話す。