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大友啓史監督と古沢良太が明かす、“新しい信長”を生みだすまでの道のりと「とにかくえげつない」木村拓哉の魅力

インタビュー

大友啓史監督と古沢良太が明かす、“新しい信長”を生みだすまでの道のりと「とにかくえげつない」木村拓哉の魅力

「俳優、木村拓哉はとにかくえげつない」(大友)、「もう一度、木村さんのラブストーリーを見たかった」(古沢)

天下布武を目指し、“魔王”と化していく信長をすごみと共に演じ切った木村拓哉
天下布武を目指し、“魔王”と化していく信長をすごみと共に演じ切った木村拓哉[c]2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

――現場で、信長を演じる木村さんを目にした印象を教えてください。

大友「えげつないし、すごいです(笑)。ぜひこれは観客の方々にも作品を通じて実感していただきたいのですが、俳優、木村拓哉は『とにかくえげつない』、その一言に尽きますね。25年ほど前にも木村さんは信長を演じていますが(ドラマ『織田信長 天下を取ったバカ』)、年齢を重ねたことで、キャラクターに対する想いや視点、知識も深まり、そこに自分自身が歩んできた人生を投影することもできる。木村さんは『いつかまた信長を演じたい』と思っていたそうですが、ものすごくいいタイミングでその願いが叶ったんだなと感じています。本作で描かれるのは壮大な物語ではあるけれど、繊細な夫婦の物語でもあります。それはきっと、経験や年輪を重ねたうえで、より表現としての説得力を持たせられるもの。『演じたい』という思い入れだけではなく、年月を経て得た経験値や技術をすべてを信長に注ぎ込んでいく、超プロフェッショナルな俳優、木村拓哉が現場にいました。だからこそ、その厚みがえぐいんですよ(笑)」

古沢良太は、木村拓哉がスターとしての孤独を信長に重ねているように感じたという
古沢良太は、木村拓哉がスターとしての孤独を信長に重ねているように感じたという[c]2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

古沢「僕も撮影現場にお邪魔したのですが、返り血を浴びて本能寺に佇んでいる木村さんを見ていると、とてもじゃないけど『来ましたー!』みたいな軽い感じで声をかけることもできなくて(笑)。離れた場所から、見学させてもらっていました。あとで木村さんに『見学していました』とお話ししたら、『言ってよ!』って怒られちゃったんですけどね(笑)。木村さんは、時代を背負ってきた方でもあると思うんです。だからこそ、誰にもわからないような孤独を抱えているはず。その孤独を、本作の信長に重ねているようにも感じました。僕らから見ると、木村さんは俳優の枠に収まらない特別な存在のように感じるけれど、彼自身はあくまでいち俳優であるという自覚があって、ものすごく職人的な方だなと思っています」

――古沢さんは、木村さんに同世代としての憧れがあったとのこと。どんな木村さんが見たいと思いながら、脚本に臨まれたのでしょうか。

古沢「僕自身、木村さんのラブコメが大好きですし、『木村さんのラブストーリーをまた観たい』と思っている方もたくさんいると思うんです。信長の30年を描く物語ならば、木村さんが演じるラブストーリーをもう一度観られると思いましたし、10代の信長として、みんなが大好きなやんちゃな雰囲気の木村さんも見られる。そして年齢を重ねて、いま彼が足を踏み入れている境地も表現することができる。いまの木村さんが持っているものの多くを、本作に注ぎ込んでくれたと感じています」

綾瀬はるかが、気高くて奔放な濃姫を見事に体現している
綾瀬はるかが、気高くて奔放な濃姫を見事に体現している[c]2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

――木村さん演じる信長と、綾瀬さん演じる濃姫が巻き起こす化学反応も楽しみです。

大友「夫婦の物語ではあるけれど、信長と濃姫は、あの時代、そしてあの立場ならではのたくさんの重責を背負わなければいけなかった2人。言うなれば、各々が強烈な個性を持った経営者夫婦、パートナーなんですよね。木村さんと綾瀬さんは、その重みに気づいた信長と濃姫がどのように変わっていくのかを表現しなければならない。その2人のやり取り、化学反応からは目が離せませんでした。木村拓哉と綾瀬はるかは、物語を強靭に支え、物語の魅力をより広げていく力と輝きを持つ役者であると、改めて実感しました」

――古沢さんは、現在放送中のNHK大河ドラマ「どうする家康」の脚本も手掛けられています。時代劇を描くおもしろさを実感していることがありましたら、教えてください。

古沢良太が「この映画に相応しい本能寺」と自信をのぞかせた本能寺の変にも注目!
古沢良太が「この映画に相応しい本能寺」と自信をのぞかせた本能寺の変にも注目![c]2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会


古沢「海外から見ても、日本の戦国時代って興味のある題材だと思うんです。そういった意味でも、時代劇は大変な鉱脈になり得るものだと思うので、あまり堅苦しく考えすぎずに、いままで伝統を守ってきてくださった人たちの力を借りながら、新しい時代劇をもっとクリエイトしていくべきだと感じています。時代劇は、世界中に胸を張って発信できる財産だと思います」

大友「男女の関係、父と子、母と子の関係も、濃厚でありながらシンプルな形で描けるのが、時代劇だと感じています。スマホもない時代ですから、あらゆる物事をシンプルに描ける。それはとてもおもしろいですね。また時代劇を作るうえである程度の様式やルールはありながらも、視野を狭めて考える必要はないのかなと。古沢さんがおっしゃったように、海外からも日本の歴史を題材にしたゲームや映像などが生まれていて、楽しんで作っていることが伝わるような、自由でアイデアに富んだものもあります。僕らももっとおもしろがって、時代劇を作っていいのかなと感じています」


取材・文/成田おり枝

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