『#マンホール』鑑賞前に観たいシチュエーション・スリラーまとめ。熊切和嘉監督が中島裕翔に勧めた意外な一本は?
『ランボー』に『穴』…他ジャンルの作品からのエッセンスも
また熊切監督は、本作を手掛ける上で参考にした作品を挙げる。「大好きな作品です。“顔の見えない群衆の怖さ”みたいなところで影響を受けています」と語ったのは、オリヴァー・ストーン監督の『トーク・レディオ』(89)。そして「川村の足の怪我の応急処置のシーンで参考にしています」と明かすのは、シルベスター・スタローンの代表作の一つである『ランボー』(82)だ。
さらに主人公がマンホールからの脱出を目指すという点が共通するのだろう、“脱走もの”映画の名作からも2本。ドイツ占領下のフランスでゲシュタポに捕らえられたフランスの軍人の脱走を描いたロベール・ブレッソン監督の『抵抗(レジスタンス) 死刑囚の手記より』(56)。もう一本は実在の脱獄事件をベースにしたジャック・ベッケル監督の『穴』(60)。この2本を参考にした脱出劇となれば、この上ない緊張感が味わえること請け合いだ。
ブラックユーモアは巨匠オリヴァー・ストーンの映画から!
最後に紹介するのは、熊切監督が主演の中島にクランクイン前に鑑賞することを勧めたという作品。「全体の悪ノリ感といいますか、ブラックユーモアの感じを参考にしました」と挙げたのは、オリヴァー・ストーン監督の『Uターン』(97)だ。
借金を返そうとラスベガスへ向かう途中、愛車が故障して寂れた街に足止めを食ってしまう主人公のボビー(ショーン・ペン)。強盗に遭って金を失った彼は、不動産業者のジェイク(ニック・ノルティ)から妻のグレース(ジェニファー・ロペス)を殺す仕事を請け負うのだが、妖艶なグレースから逆に夫殺しの計画を持ちかけられてしまう。
こうした様々な過去の傑作のエッセンスを投入して作りあげた『#マンホール』。世界を相手に独創的なアイデアで勝負できる、日本発のジャンル映画としての挑戦心にあふれた本作は、現地時間2月16日から開幕する第73回ベルリン国際映画祭のベルリナーレ・スペシャル部門に正式出品されている。海外でどのような評価を受けるのか注目しながら、まずは劇場に足を運び、その衝撃の結末を目撃してほしい!
文/久保田 和馬